厚労省 専ら医に区分変更へ(2019.11.21)


 次回の食薬区分の一部改正で、専ら非医薬(非医)から専ら医薬品(専ら医)への区分変更が一斉に行われる見通しとなった。区分変更が予定されているのは植物由来物のみ10原材料にも上る。専ら医薬に移行されれば、食品としての販売は事実上不可能となる。区分変更される植物は今後さらに増える可能性もあり、注視が必要だ。

 食薬区分を所管する厚生労働省は11月18日の朝、食薬区分リスト(医薬品の範囲に関する基準)の一部改正に関するパブリックコメント(意見募集)を開始した。意見は来月17日(必着)まで受け付ける。

 担当する同省監視指導・麻薬対策課は、今回の一部改正で、計10の植物由来物について、現行の非医から専ら医に移行させる考え。有識者の意見を聞いた上での判断という。該当は以下の通り。

 カイコウズの全草▽カンレンボク(キジュ)の全草▽クジチョウの全草▽ハナビシソウの全草▽ヒヨドリジョウゴ(ハクエイ/ハクモウトウ)の全草▽ヒルガオの根▽ルリヒエンソウ(ラークスパー)の全草▽エンベリアの果実▽ケイコツソウの全草▽コオウレンの茎・根茎──。

 このうちヒルガオについては、地上部に関しては非医のままとする考え。また、非医に現在収載されている植物のダイフクヒについて、他名等に「ビンロウジ」、部位等には「種子」を追記した上で、果皮は従前通り非医のままとしつつ、種子を専ら医とする考えを示している。

 厚労省は今年5月、少なくとも16の植物を非医から専ら医薬に移行する可能性があることを、業界団体を通じて業界に内々に示し、使用量などに関する情報提供を求めていた。今回、区分変更の方向性が示された植物由来物は、ビンロウジも含め全てが、厚労省がその際示したリストに含まれていたもの。これら植物を原料にした原材料を配合した健康食品などの流通実態ははっきりしないが、少なくともコオウレンは、現在取り扱っている原材料事業者が存在する。

 一方、当初のリストに含まれていたものの、今回の一部改正案で専ら医への変更が示されなかった植物もある。ただ、それらにしても非医に留めることが確定したわけではない。監視指導・麻薬対策課は取材に、「引き続き検討する」と述べている。

 区分変更の判断が保留されている植物由来物の中には、健康食品用原材料などとして現在流通しているものが複数含まれており、事業者に与える影響が大きい。同課としても慎重に検討している模様だ。

年末までに次回WGか
 厚労省は同日、今回の食薬区分一部改正に関連する審議を行った諮問機関「医薬品の成分本質に関するワーキンググループ」(WG)の議事概要も公開。審議は、今年7月と9月の2回にわたり行われていた。

 議事概要によると、今回の一部改正で非医から専ら医に変更する方向性が示された植物は、WGが「そのものの毒性や含有成分、含有成分の類似物の毒性」を検討した上で移行の妥当性を判断。具体的には、例えばエンベリアの果実については、「避妊薬として使用され、網膜に対する毒性を示すエンベリンを含む」などとされている。

 一方、同WGの開催頻度はこれまで年1~2回が通常で、開催されなかった年もある。そのため、今回のように連続的に開催されるのは稀だが、同省監視指導・麻薬対策課関係者は今年7月、業界関係者向けに行った講演で、食薬区分の照会から判断までの時間短縮などを図る目的で、WGの開催頻度を今後増やす方針を明言。今年度は3回以上開催する可能性もあることを示唆していた。

 年内あるいは年度内にも次回WGが開催される可能性がありそうだ。実際、7月、9月の2回のWGでは、区分移行以外にゴミシやサラシア・オブロンガ(茎・根)など複数の新規成分本質に関する審議を同時に行っているが、結論が出なかったため「次回以降改めて審議」するとされたものが目立つ。区分変更に関する判断がまだ固まっていない植物についても、次回以降の会合で審議する可能性も考えられる。

区分変更がなぜ必要か
 非医リストに収載されているものを専ら医に移行させる必要があるのはなぜか。背景には、改正食品衛生法に導入された健康食品に関する「指定成分制度」に関連し、所管する厚労省食品基準審査課が組織した有識者検討会による、指定成分候補の検討作業があったとみられる。

 指定成分候補に現在なっているのはプエラリア・ミリフィカ▽ブラックコホシュ▽コレウス・フォルスコリー▽ドオウレンの4素材だが、同検討会では、食薬区分の非医リストなどを対象に候補を選定。その際、「薬機法による規制(医薬品としての扱い)」が妥当と判断される品目も選別している。

 選別結果は明らかにされていないが、2018年度厚生労働科学研究で行われた「『専ら医薬品』たる成分本質の判断のための調査・分析及びその判断基準・範囲の整備に関する研究」の分担研究の一つに、「非医リストの見直しに関する研究」(研究代表者=袴塚高志・国立医薬品食品衛生研究所生薬部長ら)がある。

 この研究の報告書によると、研究は「指定成分制度の構築に携わる」なかで行われたものだといい、非医リストのうち植物由来物を精査して専ら医への移行が「望ましいと思われる」品目を選定。その数は20に上り、今回の食薬区分一部改正で非医から専ら医へ区分変更する方向性が示された全ての植物が含まれている。選定理由としては主にアルカロイド類の含有を指摘している。

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