原材料事業者 素材セミナーで新常態 (2020.6.25)


 新型コロナウイルス感染拡大はサプリメント・健康食品業界の慣習にも大きな変化を与えそうだ。新製品や注力製品を紹介する場として大切だった展示会が軒並み開催中止となったり、在宅勤務が広がったりしたことを受け、原材料事業者がアピールの場をインターネットに移している。この動きは受託製造事業者にも広がりそうな気配。第2波、第3波への警戒、防止対策が求められているなかで、業界のニューノーマル(新常態)として定着していく可能性がある。

 新型コロナ禍で各種セミナーの場がインターネットに移ることになった。いわゆる「ウェビナー」だ。オンライン会議システムなどを利用し、特定の日時に視聴者を集め、セミナーをライブで配信。チャットなどを通じて質疑応答も行える。当日視聴できない人のために録画配信を行う場合も目立つ。

 化粧品・サプリメント原材料製造販売を手掛ける一丸ファルコスは、おおよそ週に1回の頻度で業界関係者のうち会員限定のウェビナーを開催するようになった。同社の研究開発担当者らによるセミナーをライブ配信しつつ、録画配信も行う。セミナーテーマとしては化粧品原材料が多いが、今月22日午前、サプリメント原材料(プロテオグリカン)に関するウェビナーを開催した。

 展示会の開催中止で原材料事業者や最終製品OEMメーカーなどの出展企業は、展示会内でプレゼンテーションセミナーを開催できる場も失った。その代替として、YouTubeなどを通じてプレゼン動画を配信する動きが原材料事業者の間で広がっている。大半が録画の配信だが、リアルのセミナーと違い、いつでも、どこでも、都合のよい時に視聴してもらえるメリットがある。

 丸善製薬は現在、パイナップル由来グルコシルセラミドやブラックジンジャー抽出物など、同社で販売するサプリメント原材料の機能性などを紹介する動画を計3つ、インターネット上にアップしている。URLは同社のメルマガ会員(健康食品、化粧品などの業界関係者)のみに伝えている。

 機能性表示食品制度について解説する動画も上げ、サプリメントに関心のある化粧品業界関係者会員にもアピール。その他の動画も含め、「会員限定であることを考慮すると、多くの方にご視聴いただいている」と同社では話す。
 オリザ油化も取り扱い素材(主にサプリメント用原材料)に関するオンラインセミナーを先月スタート。研究開発員らが同社の機能性表示食品対応素材について解説したり、最新の臨床試験データを伝えたりする録画を計8本(今月21日時点)、配信中だ。同社ウェブサイトの業界関係者会員のみが視聴できる仕組みにした。動画の種類は今後も増やす予定という。

 他にも、備前化成やケミン・ジャパンなどがYouTubeに動画をアップ。原材料供給の他に最終製品OEMも手掛ける備前化成では、独自製剤技術の『B‐Rec錠』に関する動画を含め、計3本のプレゼン動画を同社のホームページから誰でも視聴できるようにした。

 ケミン・ジャパンは、『フローラグロー ルテイン』の機能性(目・脳・肌)とエビデンスを日本語で解説する動画をYouTubeに掲載した。同社ヒューマンニュートリション&ヘルス部門のウェブサイトも刷新し、ここにきて日本語での情報発信を強化しているようだ。

受託メーカーも続くか
 開催中止を余儀なくされた展示会の主催会社も、出展予定だった原材料事業者らによるプレゼン動画のオンライン配信に取り組んでいる。

 展示会『ifia/HFE Japan2020』主催の食品化学新聞社は、同展示会の特設ウェブサイトを先ごろ開設(9月30日までの期間限定)。オリザ油化、備前化成、サンブライト、常磐植物化学研究所、三和酒類などによるプレゼン動画をサイト上にアップした。

 また、出展企業の製品・技術資料も掲載しており、さながらオンライン展示会の様相も呈している。

 今後、原材料事業者ばかりでなく最終製品受託製造事業者でもオンラインセミナーの開催が進みそうだ。大手の三生医薬は来月以降、YouTubeを通じ、セミナー動画を連続的に配信していく予定。有識者を交えたパネルディスカッションを配信する計画も立てているという。

 日本は、新型コロナ感染拡大防止のための営業自粛や移動制限が全国的に解除され、平時をいったん取り戻しつつある。展示会も、今秋以降は今のところ予定通り開催される見通しだ。ただ、原材料事業者らによるオンラインセミナーはしばらく続きそうで、ある事業者は「頻度は減るかもしれないが、何らかの形で続けていくことになると思う」と話す。





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