2020上期 受注多かった乳酸菌 NMNへの期待高まる(2020.9.24)


 健康食品受託企業が今年下半期に期待する商材として挙げたのは「乳酸菌」――。新型コロナウイルス感染拡大を要因に、訪日客が激減した今年上半期。健食業界の好調ぶりを支えていた要因のひとつ、訪日客による健康食品購入がほぼ消滅した一方で、消費者自らが健康管理に役立てるものとして健康食品を選択し、新たな市場を創出しつつある。今年上半期は乳酸菌の受注が多く、下半期も乳酸菌の受注がさらに増えることを期待する受託企業が多いようだ。

 本紙では、健康食品やサプリメント、健康飲料を中心に製造する受託企業を対象に、年2回アンケートを実施している。この稿では、2020年上半期(1月~6月)に受注の多かった素材、今年下半期(7月~12月)に期待する素材、工場新設や製造ライン増設、研究設備増強といった設備投資について尋ねた結果を紹介する。

 今年上半期の受注で最も多かったのは9社から挙がった「乳酸菌」。次いで、「プロテイン」(8社)、「ビタミンC」(6社)、「コラーゲン」(同)、「青汁(大麦若葉、ケール、桑葉など)」(5社)、「アミノ酸」(3社)、「プロポリス」(同)が続いた。前回調査(19年12月)で上位にあった乳酸菌、プロテイン、コラーゲンなどが順調に受注を伸ばしている。参入企業が相次ぎ市場が拡大基調にある乳酸菌、ここ数年で需要が増しているスポーツ向け食品の定番プロテイン、美容素材として定着したコラーゲンが名を連ねた。

 今回の調査で特徴的な点は、ビタミンCがランクインしたこと。本紙では20年以上にわたり、同様の調査を定点的に行っているが、ビタミンCが受注の多かった素材として挙がるのは稀。新型コロナの影響で、体調の維持を目的に栄養素の基本であるビタミンをサプリで摂取するといった需要が一気に高まったと推測される。企業からは、「免疫力アップ」に対する需要増が背景にあるのではとのコメントもある。

 下半期に期待する素材はどうか。「乳酸菌」が3分の1を超える18社から期待する素材として挙がった。次いで、「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」(8社)、「プロテイン」(5社)、「DHA・EPA」(4社)、「青汁」(3社)、「HMB Ca」(同)となった。

 受託企業が今年下半期に期待を寄せる素材は、乳酸菌が圧倒的な数を揃えた。新型コロナ感染拡大の終息時期が見通せないなか、消費者が自らの健康管理を今後も継続していくことが予想され、その対応素材として乳酸菌が挙がったようだ。また、飲料やタブレット、ソフトカプセルなど様々な用途で展開が可能な素材であることも、受託企業から高い期待が寄せられていると推測される。

 NMNは前回調査では上位に入らなかった素材だが、この半年間で受託企業の期待が高まっている。機能面の話題性は高かったものの、原材料価格が高価なこともあり、最終商品の開発が進みにくかった経緯がある。そのなかで、原材料価格を抑えたサプライヤーが相次いで参入していることなどが、受託企業の期待を高めているようだ。

 今後の設備投資の予定の有無では、「有り」が23社、「無い」が21社だった(未回答2社)。「有り」の内訳は、「新工場の建設」は2社、「製造ラインなどの増設」は11社、「品質管理レベルの向上」は10社、「研究設備の増強」は5社、「GMPなど認証取得」は4社だった(複数回答)。

 設備投資については、前回調査とほぼ変わらない。新工場の建設については、ここ数年で複数社が新設を済ませていることもあり、数は多くないが、製造ラインの増設を予定する先は例年通り複数社から挙がっている。コロナ禍でインバウンド消費に関連した受注は期待できないものの、健康食品自体の需要が衰えたわけではない。今後、最終商品メーカーで予想される越境ECなど海外展開を見据えた受託企業の設備投資でもあるだろう。


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