アフィリエイト広告 狭まる包囲網 消費者安全法を初適用(2021.3.11)


 健康食品や化粧品などで目立つインターネット上のアフィリエイト広告を巡り消費者庁は今月、消費者安全法に基づく注意喚起、景品表示法に基づく措置命令をそれぞれ行った。調査で明らかになったアフィリエイト広告の虚偽・誇大性を厳しく指摘してもいる。アフィリエイトプログラムの実態把握調査を進行させている中で同庁が示した、「アクセル踏みすぎ」が目立つといえるアフィリエイト広告の現状に対する新たな姿勢は、同広告に対する包囲網が狭まってきたことを示唆すると言えそうだ。

広告商品の販社名公表
 肌のシミが数日で消えるなどとうたう化粧品のアフィリエイト広告を巡り、そのような効果はなかったとする消費者相談が増えているなどとして消費者庁は3月1日、消費者安全法の規定に基づき、消費者被害の拡大防止を目的にした注意喚起を行った。当該広告は体験談が捏造されたものであるなど虚偽・誇大であることを確認したという。アフィリエイト広告に対して同法を適用したのは初めて。

 消費者安全法では、消費者の財産事故拡大防止のため、商品名や事業者名を公表し、注意喚起できる規定を設けている。同庁は今回、当該アフィリエイト広告を作成したアフィリエイターや、広告主とアフィリエイターを仲介するアフィリエイトサービスプロバイダ(ASP)を突き止めているにもかかわらず公表せず、同アフィリエイト広告で販売されていた化粧品の通販売会社2社の社名などを公表した。

広告の内容、責任の所在は?
 社名と商品名を公表された2社は、それぞれ「結果的に不適切な広告が行われた」などとしてホームページで謝罪。ただ、当該アフィリエイト広告の内容は自ら作成したり、指示したり、承認したりしたものではないともコメントし、アフィリエイト広告内容に関する責任の所在はアフィリエイターやASPにあると主張したい考えを示唆した。

 しかし、同庁によれば、両社はそれぞれASPに対して広告業務を委託、また、ASPがアフィリエイターに広告作成を委託することを承知していたという。そのため、両社はアフィリエイト広告の修正が可能な立場にあったと言えることから同庁は、両社はそれぞれ「アフィリエイト広告の表示内容の決定に関与していた」と断じた。

 アフィリエイターやASPの名称を公表したところで、消費者の財産被害の拡大防止に繋がらない可能性がある。そのため同庁は、当該アフィリエイト広告の対象商品名と販売社名を公表することで、迅速な被害拡大防止を図ったとみられる。

 今後、特定商取引法など別の法律でアフィリエイターやASPを処分することを視野に入れている可能性も考えられる。昨夏に起こった、健康食品に関するネット上の体験談広告が問題になった薬機法違反事件(大阪府警)。この事件では、「何人(なんぴと)規制」が適用され、逮捕者が広告代理店や広告制作会社の関係者にまで及んだ。

 消費者安全法の注意喚起規定が適用された過去の事例としては、2019年9月、下痢などの体調不良を訴える消費者が急増しているなどとして商品名等が公表されたダイエット訴求サプリメント『ケトジェンヌ』の事案が知られる。販売会社はその後、特定商取引法に基づく一部業務停止命令、景品表示法に基づく措置命令および課徴金納付命令の行政処分を相次いで受けることとなった。

消費者庁、体験談は「捏造」
 消費者庁の発表によるとアフィリエイト広告で虚偽・誇大に宣伝されていた化粧品は、通販会社のLibeiro(東京都中央区)が販売する『エゴイプセビライズ』と、同じく通販会社のシズカニューヨーク(東京都渋谷区)が販売する『シズカゲル』(医薬部外品)。

 同庁と長野県の合同調査で、肌のシミが数日で消えるかのような内容の体験談等が盛り込まれた当該アフィリエイト広告は虚偽・誇大なものである事実を突き止めたという。

 同庁らの調べによれば、両社および両商品の間には何ら関係性は認められない一方で、それぞれのアフィリエイト広告は同じアフィリエイターが作成。また、商品以外はほとんど同じ文章や画像が用いられたアフィリエイト広告も認められた。

 同庁らは、アフィリエイターに対する調査も実施。両商品のアフィリエイト広告に表示されていた体験談は当該商品を使用した消費者が実際に投稿した内容なのかどうかについて、合理的な回答が得られなかったという。このため同庁は、それぞれのアフィリエイト広告に表示されていた体験談は「架空のもの」だったと断じた。

 広告内容が虚偽・誇大なものであったことから、両社は今後、景品表示法の観点からも追及を受ける可能性が考えられる。



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