アスコフィラン、にわかに関心 引き合い増 (2021.3.25)


 カツオエラスチンを製造・販売する林兼産業(山口県下関市)が2012年に上市した海藻抽出物の引き合いが増えている。NK(ナチュラルキラー)細胞の活性機能等がヒト試験で確認されていることを背景に、免疫サポート素材として注目が高まったことが要因のようだ。同社としても、需要を定着させようと提案に力を入れている。

 引き合いが増えているのは、同社で開発した『アスコフィランHS』という機能性食品素材。主に北大西洋沿岸に生育する食用海藻の一種、アスコフィラム・ノドサムを基原原料にした抽出物で、有効成分として、同海藻に含まれる多糖体の一種、アスコフィランを20%以上含有するよう規格化したもの。2020年の中盤に入り、引き合いや問い合わせが一気に活発化したという。

フコイダンとは異なる
 海藻に含まれる多糖体といえば、フコイダンが知られるが、アスコフィランとフコイダンは構造、組成が大きく異なる。フコイダンの主鎖はフコースで構成されているのに対して、アスコフィランはウロン酸。その側鎖にフコースやキシロースを持つ構造を持つ。同社と長崎大学などがこれまでに共同で実施した機能性研究では、各種免疫指標などに及ぼすアスコフィランの活性について、フコイダンと比較して強いことが確認されているという。

 ここにきて引き合いが増した背景には、一般消費者に直接訴求できるわけでないものの、業界が免疫サポート素材に対する関心を大きく高めたことがありそうだ。その中で同素材には、一定のエビデンスがあったことが大きかったと推測できる。

有効性、ヒト試験で示唆
 同社はアスコフィランHSの発売後、主に長崎大学と連携してエビデンスの積み上げを進めた。これまでに16報の論文を国内外のジャーナルに投稿。ヒトへの有効性については2014年、免疫細胞の一種NK細胞の活性が低めの男女12名を対象に、免疫活性化機能を検証した結果を発表。同素材を1日あたり100㍉㌘、8週間摂取することで、NK細胞の活性と、NK細胞の活性に関わるインターロイキン12等の血清中サイトカインの濃度が、摂取前後でプラセボ群と比べて有意に高まったと報告した。

 また、最新の知見として、重症化肺炎モデルマウスを使用した実験結果を昨年、論文発表し抗肺炎機能が示唆されたと報告。肺炎感染前に同素材を摂取したマウスに、生存率の上昇、肺組織の炎症抑制、サイトカイン濃度の上昇などといった現象が認められたという。これより以前の研究では、HIVの感染抑制機能を細胞試験で確認しており、一連の研究結果を踏まえ、同社では、「免疫機能が低下している方が感染前から摂取し続けておくと感染予防により効果的かもしれない」と話す。

 機能性表示食品として展開できる可能性に興味、関心を示す引き合いも少なくないという。ただ、同社では、現在のエビデンスなどを踏まえ、慎重な姿勢だ。同素材は、海藻由来素材特有の匂いや粘性などを解消した上、溶解性が高く、様々な最終製品に配合できる特長を備えている強みもあり、機能性表示食品制度への対応に「ぜひチャレンジしたい」としているが、「そのためには、更にエビデンスを増やす必要があるだろう。今後も研究を続けながら、チャレンジできる機会をうかがいたい」と話している。



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