肝臓の健康 新市場の予感 関連素材に引き合い (2021.5.13)


エビデンスがあるアーティチョーク
 「肝臓の健康維持」に着目したサプリメント・健康食品の開発、発売に向けた意欲が高まっている。それに関連したエビデンスの原材料に対する引き合いも増加傾向を見せている。肝臓や肝機能に対する有効性を志向する商品は、これまでいわゆる「アルコール対応」に特化する形で需要の掘り起こしが進められてきた。潮目が大きく変わりつつある。

 「昨年からです。問い合わせが増え、販売量も伸び始めています」
 こう話すのは、食品添加物やサプリメント・健康食品向け原材料の輸入販売を手掛けるサンブライト(東京都中央区)。3年前に取り扱いを始めたアーティチョーク葉抽出物に対する引き合いが、ここにきて大きく高まっている。

 このアーティチョーク葉抽出物は、イタリアの抽出物メーカー・バイオナップ(BIONAP)が開発、製造するもの。肝臓に脂肪が過剰に蓄積する脂肪肝に対する有用性が、男女100名を対象にしたRCT(ランダム化比較試験)で示唆されているサプリメント向け素材だ。日本での原材料販売はサンブライトが独占的に手掛ける。

 有効性が検証されたRCTは、主として非健常者を被験者にしたもの。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の症状を持つ人、あるいはそのリスクが高い肥満などのメタボリックシンドローム患者を対象に行われた。

 試験結果をまとめた論文は、海外ジャーナル「ニュートリエンツ」に2019年に掲載された。1日150㍉㌘を6カ月間続けて摂取することで、「脂肪肝指数」の改善が認められたこと、ALTやASTなど肝機能マーカーにも改善が見られたことなどを伝えている。

 同素材の規格成分は、クロロゲン酸類とルテオリン‐7‐グルコシド類の大きく2成分。バイオナップらの調べによると、クロロゲン酸とその誘導体には、肝機能保護機能のあることが示唆されているという。

 「健康な中高年世代の方の健常域でやや高めの血中肝機能酵素(ALT)値を低下させる機能があります。血中ALT値は肝臓の健康状態を示す指標の一つです」

 2019年初頭、そのようなヘルスクレームを行うとする機能性表示食品のサプリメントの届出が公開された。届け出たのはカゴメ(愛知県名古屋市)。

 機能性関与成分はブロッコリースプラウトエキス末に含まれるスルフォラファングルコシノレート。『スルフォラファン』を商品名で、〝肝臓ケア〟を訴求する。発売以来、販売プロモーションにも余念が無いように見える。

 サンブライトでは、アーティチョーク葉抽出物に対する引き合いが大きく伸びた理由の一つとして、この機能性表示食品の存在があると推測。「アルコール対応や二日酔い防止などだけにとどまらない、『肝臓の健康』というコンセプトに対する関心が、全体的に高まり始めているのだと思います」と話す。

 一方で、同社が手掛けるアーティチョーク葉抽出物の機能性を巡っては、前掲の臨床試験の結果、肝機能マーカー以外にも、コレステロールや中性脂肪はじめ、血管内皮機能の指標となるFMDなど、メタボリックシンドロームに関わるマーカーの改善も確認されている。

 この点も、引き合いが伸びている理由の一つと同社では見る。「肝機能に加えて、生活習慣関連の機能も訴求できる可能性がある。そこに興味が持たれているのかもしれません」という。


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