新・抗肥満素材=フコース 「機能性」市場に普及図る(2021.5.13)


 水産物由来の機能性食品素材の製造・販売を手掛ける焼津水産化学工業(静岡県焼津市)は、先月19日に上市した新素材「フコース」について、内臓脂肪の減少など抗肥満領域の機能性表示食品対応素材として市場に普及させる考えを、健康産業流通新聞の取材で強調した。査読付き学術誌に投稿中の臨床試験論文が受理され次第、研究レビューの実施など届出サポートに向けた準備を本格化させる。早ければ年内にも対応を始めたい考え。

 今回、同社が開発した新たな水産物由来機能性食品素材は、アスコフィラムノドサムという海藻を原料に、単糖類の一種であるフコースを抽出・精製したもの。フコースの含量を30%以上で規格化した白色の粉末製品を開発した。ほどよい甘味があり、また、水に溶かしても無色透明である特徴を生かし、「サプリメントからドリンクなど一般食品まで幅広く提案していく」(機能性素材営業部)。

 同社によると、フコースは、ヒトの血中や母乳中に含まれる他、褐藻類に含まれる多糖類のフコイダンを構成する単糖の一種。以前から海藻に多く含まれることが知られていたものの、「抽出・精製が難しくこれまでほとんど活用されてこなかった」(同)経緯があるという。

 そんな成分を工業的に量産するための生産技術を、同社が東京大学および科学技術振興機構と連携して開発。生産技術の開発と同時に機能性研究も進め、内臓脂肪の蓄積を抑える働きのあることを動物試験等で突き止めるとともに作用メカニズムも確認。脂肪の蓄積に関わるPPARγの発現を低下させ、逆に、エネルギー消費の促進に関与する多量体アディポネクチンを増加させる働きを見出し、昨年に論文発表。論文は海外ジャーナル「ニュートリエンツ」に掲載された。

 その上で、ヒトへの有効性を検証するRCT(ランダム化比較試験)は昨年、国内で進めた。肥満気味の健常者、同社製のフコースを1日あたり150㍉㌘(製品として500㍉㌘)を含むチュアブル錠を累計20週間摂取してもらい、CTスキャンによる腹部脂肪面積の測定をはじめ、ウエスト・ヒップ周囲径に与える影響などを検証。同時に安全性も確かめた。

 試験結果をまとめた論文は現在、査読付き学術誌に投稿中だが、同社によると、体重、腹部内臓脂肪面積、皮下脂肪面積に加え総脂肪面積について、フコース摂取群はプラセボ対比で有意に低下。また、ウエスト・ヒップ周囲径も同様に有意な低下が認められた。さらに、フコース摂取群は排便回数が有意に増加した。一方、血液成分などを対象にした安全性評価では、特に問題となる事象は確認されなかったという。

 同社が抗肥満素材を上市するのは今回が初。臨床試験の結果を受け、今後、体重・体脂肪低減▽ウエスト・ヒップ周囲径低減▽便通改善──の3機能を個別に、あるいは複合的に訴求できる機能性表示対応素材として市場への普及を推進していきたい考えを、健康産業流通新聞の取材に語った。

 また、尿酸値対応のアンセリン、膝関節対応のN‐アセチルグルコサミンといった「当社の既存の機能性表示食品対応素材との組み合わせも提案していきたい」(同)とも話しており、機能性表示食品市場において、新素材のフコースをテコに既存素材の拡販を図る構えだ。

 「ダイエット市場はレッドオーシャンだが、フコースは十分に戦っていける素材だと考えている」(同)という。


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