話題のALA巡り企業間係争 ユーザーが製造元を提訴(2021.5.27)

SBIファーマ合体②

 サプリメントの原材料5‐ALA(アミノレブリン酸)を巡り、企業間における係争が勃発した。契約違反があったなどとして、5‐ALAの製造元をユーザー企業が提訴。製造元は全面的に反論しているが、このユーザーは製造元の生産工場の仮差押えも申し立てており、極めて穏やかならぬ事態になっている。5‐ALAは、長崎大学らによる「対新型コロナウイルス」研究によって注目度が急上昇している成分。本来であれば協調が求められるステークホルダー同士の係争は、市場形成に向けて高まる機運に重大な冷や水を浴びせかねない。

SBIファ「契約違反」主張
 「ネオファーマジャパン株式会社による日本国内におけるサプリメント無断販売等につきまして」
 4月21日、そう題したニュースリリースが公開された。リリースを出したのはSBIホールディングス子会社のSBIファーマ。一方、名指しされて無断販売を訴えられたネオファーマジャパンは、静岡県袋井市の生産拠点で5‐ALAを製造する原材料メーカー。新型コロナに対する同成分の治療効果などを検証している長崎大の共同研究先でもある。

 SBIファーマは、ネオファーマから原材料供給を受け、同成分を配合したサプリメントの製造・販売などを行っており、両社は、5‐ALAの製造元とそのユーザーの関係にある。

 しかし4月上旬までに関係が大きく決裂した模様。SBIファーマがネオファーマを相手取り、東京地裁に訴訟を提起したためだ。何があったのか。

 SBIファーマは、リリースで、契約違反があったと主張している。というのも、ネオファーマは今年4月、同社製5‐ALAを配合したサプリメントの国内販売を同社独自に開始。それが両社間で締結した契約に「明確に反する」とSBIファーマは訴える。3月、「無断販売に対する損害賠償」を求めて東京地裁に訴訟を提起したことをリリースで明かした。

 一方、ネオファーマも黙っていない。SBIファーマがリリースを出した翌22日、同社の言い分は「事実に反する」などとして、全面的に反論する文書を同社ホームページに公表。ネオファーマのウェブサイトを使ったサプリメントの独自販売は「SBIファーマとの契約にて合意した販売態様」だと主張した上で、「彼ら(SBIファーマ)の主張は契約内容を恣意的に拡大解釈し不当に取引を制限する行為」だとする強い見解を公にし、争う姿勢を鮮明にさせた。

 他方で、SBIファーマが訴えているのは契約違反だけではない。同社は4月21日付リリースで「令和2年11月18日にNPJ(ネオファーマ)がSBIファーマに供給すべき5‐ALAリン酸塩の供給を行わなかった」と主張。そのため、ネオファーマを被告に東京地裁に提起した訴訟では、同社から購入した5‐ALAの代金返還も請求しているという。

 しかし、ネオファーマは、供給しなかった事実はないと反論している。「本日(同社が文書を出した4月22日)においても製品は彼らの指示により自由に移動できる状態にある」と主張。「契約に基づき在庫を預かっていたところ、ある日突然引き渡していないと訴えられた」とし、「言いがかり」だと一蹴した。

ネオ社「事実に反す」と反論
 ただ、SBIファーマを全面的に迎え撃とうとしているかに見えるネオファーマだが、実は足元が揺れている。同社の5‐ALA生産拠点である袋井工場に対し、仮差押えが申し立てられているためだ。

 申し立てたのはSBIホールディングスのグループ企業である。SBIファーマのリリースによると、ネオファーマの「債務不履行に起因」し、SBIインキュベーションが袋井工場を目的物にした抵当権実行申し立てを行っているという。ただ、ネオファーマの言い分はこうだ。

 「(SBIインキュベーションとは)直接取引関係になく、同社から債務の履行を求められたことはなく、連絡を受けたこともない」

 両社の係争を巡っては、「週刊新潮」が先ごろ記事化した。記事では、袋井工場が仮差押えを申し立てられた事実を土台に、SBIホールディングス代表取締役社長でSBIファーマ代表でもある北尾吉孝氏、袋井工場地元の清水銀行なども登場させながら、SBIグループが5‐ALA生産工場を手中に収めようとしているとの筋書きを描いている。

 なお、ネオファーマは、4月22日付の文書で、5‐ALAの供給に関するSBIファーマとの契約を4月2日付で解除したことを明らかにしている。理由は、「解除事由に相当する行為が十分な猶予期間を経ても改善されず、改善の意思も示されなかった」。

 ネオファーマ製の5‐ALAは、SBIファーマらを経由する形で、複数の企業がサプリメントに配合し販売している。ネオファーマでは、「当事者間に係争があったとしても(SBIファーマの)取引先にまでご迷惑をおかけすべきではない」との認識を公にしている。だが、両社の係争が深まり、泥沼化すれば、供給が止まる可能性も考えられなくはない。

 「コロナに絡んで大きな注目を集め、これから市場を作ろうという時に、仲間割れのようなもの。一体なにをやっているのか」。両社の係争を知った業界関係者はそう嘆いている。

【写真=双方の主張は大きく食い違う(画像上=SBIファーマによる4月21日付プレスリリース。同下=翌22日付でネオファーマジャパンがホームページに掲載した反論文書)】


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