消費者庁 食表法と景表法 同時処分下す  (2021.5.27)

栄養機能食品と義務表示写真修正③

【写真=食品表示法違反と認定された健康食品(栄養機能食品)の容器包装】

容器包装表示にダメ出し 栄養機能食品に「機能性食品」
 栄養機能食品の容器包装表示に法令違反があったとして、消費者庁は5月13日、大分県大分市の健康食品販売会社に対し、食品表示法に基づく指示処分を行い、同14日に発表、社名を公表した。栄養機能食品の容器包装表示では、食品表示法に基づく食品表示基準が定める義務・禁止表示事項を遵守する必要があるが、同庁の調べで同社は計6カ所で表示違反を行っていた。同庁は、同社に対し、食品表示に関する「知識の欠如」や「管理体制の不備」などを指摘。原因究明などを指示した。

 同庁の発表によると、食品表示法に基づく指示処分を受けたのは、健康食品の通販を手掛けるシーズコーポレーション(大分市大字片島)。同社が「糖鎖栄養素含有食品」の名目で販売するビオチンの栄養機能食品『seeds糖鎖』の容器包装表示について違反を認定した。

 同社代表者は取材に「(容器包装)表示の文面は当社でつくった。(食品表示制度に対する)知識が不足していた。私の無知ゆえ。とても反省している。表示を改善した上で販売を続けていくつもり」と述べた。

 同庁の調べによると、同社が食品表示法(表示基準)違反の状態で同商品を販売していた期間は、遅くとも2018年10月から20年10月までの2年間。その間に少なくとも1万540箱を販売していたとみられる。同社ホームページによると、同商品の公称販売価格は1箱(30包)あたり約1万4000円。

 同庁が、同商品の容器包装表示について違反認定した箇所は、計6カ所にのぼる。たとえば、食品表示基準7条の義務表示事項に基づき、本来であれば「栄養機能食品(ビオチン)」と表示すべきところを、「栄養機能食品 ビオチン配合」と表示するなど、お粗末と言われても仕方のない表示を行っていた。

 また、同商品に配合しているホスファチジルセリンについて、「脳機能を元気 脳細胞に多く存在」などと同成分の機能に関する情報を表示していた他、糖鎖に関する機能も表示していた。同基準9条が定める表示禁止事項では、栄養機能食品として機能を表示できる栄養成分以外の成分の機能を示す用語を表示することを禁じている。

機能性表示食品と「紛らわしい」
 同庁はまた、「医療機関向け機能性食品」との表示も違反認定した。
 食品表示基準9条では、保健機能食品(トクホ、機能性表示食品、栄養機能食品)以外の食品について、保健機能食品と「紛らわしい名称」を容器包装に表示することも禁じている。これを根拠に同庁は違反を認定。「機能性食品」は一般的に使われる用語だが、「機能性表示食品」と紛らわしいため食品表示基準違反に当たるとする見解を改めて示した形だ。

 食品表示基準のQ&A(質疑応答集)では、保健機能食品と紛らわしい名称の具体例について、「保健○○食品」や「機能○○食品」などを挙げている。これに基づき同庁は、食品表示法施行(2015年4月)の前、機能性表示食品と紛らわしい名称を用いながら商品を販売していた事業者に表示改善を求めた経緯がある。

 同庁によると、保健機能食品以外の一般健康食品などで保健機能食品と紛らわしい表示を行った場合、食品表示法の他、景品表示法が禁じる優良誤認表示に該当するおそれがあるとしている。

優良誤認表示も当然ダメ 同梱冊子で「認知症リスク軽減」
 消費者庁がシーズコーポレーションに下した処分は食品表示法に基づく指示にとどまらない。『seeds糖鎖』について同社が行っていた広告に景品表示法違反(優良誤認)が認められたとして、同法に基づく措置命令を同時に下し、発表した。同社は今後、景表法に基づく課徴金納付命令も受ける見通し。

 同庁の発表によると、同社が同商品について優良誤認表示を行っていたのは、自社ウェブサイトやECサイトの他、商品同梱の冊子およびチラシ。

 「認知症のリスクを軽減します」「アルツハイマー型・脳血管性認知症の症状が改善される『脳機能活性栄養素』です」などと疾病の治療・予防効果が得られるかのような表示をしていたが、同庁の調査では、同社は表示を裏付ける合理的な根拠資料を持ちあわせていなかった。

 同社では、「(配合成分に関する)臨床データや様々な資料を提出しましたが認められませんでした」と釈明している。しかし、「糖鎖栄養素で健康になる」をタイトルに掲げた商品同梱冊子では、「さまざまな症状に・糖鎖栄養素」と題した上で、がん▽アレルギー症状・花粉症▽喘息▽糖尿病▽アルツハイマー病──などと記載していた。

 同社が食品表示法と景表法に基づく行政処分を同時に受けた背景を探ると、同庁はまず、景表法違反の可能性を踏まえて同社への調査を始めたとみられる。その後、調査に当たって商品の現物を確認したことで、食品表示基準違反を探知。これにより同時処分に至った模様だ。

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