オートファジー研究成果、「社会実装へ」 阪大・吉森教授が抱負 コンソーシアムが初のシンポ(2021.7.19)


 細胞のオートファジー機構をめぐる研究とその産業利用の拡大、発展を目指す一般社団法人日本オートファジーコンソーシアム(吉森保代表理事=大阪大学栄誉教授)は14日、初のシンポジウムを会場とオンラインのハイブリッド形式で開催した。

 開会挨拶には、オートファジーの仕組みを解明した功績でノーベル生理医学賞を2016年に受賞した大隅良典・東京工業大学栄誉教授がリモートで登壇。オートファジー研究は、基礎研究領域を中心に日本人研究者が世界をけん引している一方で、その実用化や産業化など「応用」をめぐるスピードでは現状、海外の後塵を廃していることに危機感を示した。大隅氏は、同コンソーシアムの最高顧問を務めている。

 同コンソーシアムは、今回の第1回シンポを、経済産業省を後援につけて開催。同省産業技術環境局基準認証戦略室担当官による、「ルールメイキングと市場形成」を題した講演も行われた。オートファジー研究成果を産業化、そして、市場形成していくための要諦の一つとして、標準化(規格化)を背景にした「ルールメイキング」の必要性を説いた。

 また、オートファジー研究成果に関する「産業活用の可能性」をテーマに基調講演を行った、同コンソーシアム代表理事の吉森氏は、同コンソーシアムの立ち上げは、「日本人研究者が世界をリードしてきた、オートファジーに関する基礎研究の成果が、いよいよ社会実装される第1歩になる。また、一般市民にもオートファジーを理解してもらうとともに、世界の人びとの健康長寿に役立つための大きな一歩にもなる」と述べた。同コンソーシアムによる今後の活動も背景に、日本によるオートファジー研究成果を基盤にした創薬の実現を始め、サプリメントや機能性食品、スキンケア製品などを社会的に普及させる意気込みを示したものといえる。

 この日のシンポの会場開催は、同コンソーシアム会員企業でもあるUHA味覚糖のUHAホール(大阪)を使用して行われた。シンポ終了後、関係者からは、細胞試験で一部の食品成分に確認されているオートファジー活性化機能を、ヒトでどう実証するかを課題視する意見も聞かれた。

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