ペンタデシル、開発進む 機能性表示対応素材へ (2021.7.29)


微細藻類から発見の新物質
 微細藻類の一種、オーランチオキトリウムに含まれる従来知られていなかった物質に、高い生理活性のあることが国内で見出された。経口摂取することで、血糖値が正常化されたり、肌状態を改善させたりする可能性があるという。同物質を機能性関与成分にした機能性表示食品の開発をめざす動きも進んでいる。

血糖値に対して機能
 先ごろ開催された日本抗加齢医学会総会(第21回)。「天然機能性成分ペンタデシルの機能性について」と題した発表(一般演題)があった。「ペンタデシル」とは、オーランチオキトリウムから得られる、主にペンタデカン酸を含む飽和脂肪酸で構成されるトリグリセライド構造物質のことで、発見者らが命名した。

 発表によれば、動物を使ってペンタデシルの機能性を検証したところ、高い状態の血糖値を正常に戻す働きのあることが示唆された。具体的には、ダメージを受けたすい臓のβ細胞にペンタデシルを添加させたところ、高グルコース時のみインスリン分泌を促進させた他、アジア型糖尿病モデルマウスにペンタデシルを一定量、経口投与した結果、耐糖能を改善させたという。

 また、2型糖尿モデルマウスに、同様に経口投与したところ、すい臓における小胞体ストレスの軽減が見られた。小胞体ストレスとは、細胞の小胞体内に異常なタンパク質などが蓄積した状態のこと。インスリンを産生するβ細胞における小胞体ストレスは、糖尿病の発症に影響すると考えられている。

 この発表を行った研究者は、ペンタデシルの機能性について、「小胞体ストレスを軽減させることでインスリンの分泌を正常にさせ、その結果、糖尿病に代表される高血糖状態を改善させる可能性がある」と語る。

 ペンタデシルの実用化は既に始まっている。まずは、スキンケア化粧品向け素材として開発された。原材料販売も行われている。

 開発および原材料販売を手掛けるのは、有機溶剤事業や環境事業を手掛けるリファインホールディングスグループのシー・アクト(東京都千代田区、坪井誠社長)。ペンタデシルを肌に塗布するとシワ改善機能を期待できることが、ヒト皮膚外用試験で分かっているという。

 同社では現在、ペンタデシルに期待できる機能性をより生かすため、食品向け素材の開発を急ピッチで進めている。各種動物試験で得られた知見がヒトでも再現されるかどうかを今後、臨床試験を通じて検証する考えだ。試験結果を踏まえ、ペンタデシルを機能性関与成分にした機能性表示食品の開発をめざす。そして、機能性表示食品対応素材として国内サプリメント・健康食品市場に提案していく。

 同社の坪井社長によると、食品向け素材の完成は年明けになる予定。現時点ではサンプルワークに対応することも出来ないが、準備ができ次第、順次応じていくという。

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