ヘルスケア食品、コロナ禍で力強さ (2021.8.26)


21年4-6月業績 前年から回復
 上場企業の2021年4月~6月期(2022年3月期第1四半期)の業績発表が相次いでいる。前年同期は、1回目の緊急事態宣言が発出され、日本経済に大きなダメージが及んだ時期と重なり、低調な業績に終わった上場企業が目立った。しかし今期は、業種にもよるが、増収を達成した先も多くみられる。サプリメント・健康食品などヘルスケア食品を手掛ける上場企業の業績はどう推移したのか――。

19年実績には届かず
 SMBC日興証券が今月5日までに発表した、東証一部上場企業約800社を対象にした業績調査によれば、うち約7割の企業の最終利益が新型コロナ禍前の19年の水準に戻った。背景には、海外経済の回復を受け、自動車など輸出が大きい製造業を中心に業績が改善したことがある。しかし、鉄道など内需の依存度が高い業種は引き続き低調だったという。

 では、内需に支えられているサプリメント・健康食品を手掛ける上場企業の業況はどうか。
 結論から言えば、大きく業績を落とした前年同期からの回復を示す企業が目立っている。新型コロナウイルス感染拡大は依然続いているが、前年の緊急事態宣言や外出自粛などを受けた経済の停滞ムードはいくぶん薄れている。その上で、消費者の健康意識が高止まりしている状況が続いていることが要因といえそうだ。

 明治ホールディングスなど乳業大手3社の第1四半期業績は揃って前年同期比で増収。各社とも機能性食品を含む事業カテゴリーの売上高が前年同期を上回り、中には2ケタの増収増益を計上した先もある。

 原材料企業も好調だ。太陽化学の第1四半期。カテキンなど主要な機能性素材の販売が国内外で好調に推移したことで、ニュートリション事業の売上高は前年同期比26%増の27億円を計上した。コラーゲンペプチド製造販売大手のニッピ、新田ゼラチンの第1四半期も、コラーゲンペプチドの需要回復を受け、関連事業の売上高は前年同期を上回った。

 一方で、新型コロナ禍以前の19年の業績にまで回復したかといえば、一概にはそうだと言えない。そこをカバーするためか、海外市場の開拓に力を入れる方針を示す先も目立っている。新型コロナ禍を背景に、これまでのインバウンドを〝受ける〟戦略から、越境ECや貿易を通じて海外に〝攻める〟新たな事業戦略が本格化しつつある。

 ファンケルのサプリメント事業の第1四半期業績は、前年の売上高85億円から90億円に回復した。健康意識の向上もあり、前年実績を上回った。ただ、19年実績の113億円には届いていない。同社では、ここにきて中国市場でのサプリメント事業を本格始動。これにより事業の底上げを図る方針だ。

 また、新型コロナ禍前までインバウンドを収益の柱のひとつとして事業展開を進めてきた小林製薬の第1四半期売上高は367億円だった。前年同期比24億円のプラスだが、やはり19年実績の399億円までには回復していない。年間で50億円を計上していたインバウンド売上の消滅が尾を引いている。同社では今後、中国を中心とした国際事業を成長基盤に事業の拡充を図る方針だ。

海外開拓の動き加速
 実際、海外事業のテコ入れによって業績を回復させた先もある。化粧品を軸にサプリメントなどを手掛けるポーラ・オルビスホールディングスだ。第1四半期の売上高は455億円。前年同期は405億円と落ち込んでいた中で、中国本土において代表ブランドの拡販を進めたことが増収に寄与した。しかし、19年実績の578億円にはほど遠い数字にとどまっている。

 他方で、19年実績にまで回復、さらにそれを上回ってきた企業もある。
 大塚ホールディングスのサプリメント事業の第2四半期(21年4月~6月期)売上高は336億円だった。大塚製薬で展開するサプリメントのブランド『ネイチャーメイド』が欧米を中心に販売が伸びたことで、前年同期から23億円増加した。19年比では79億円も伸ばした。

 森下仁丹でも業績を伸ばした。機能性表示食品の機能性関与成分として需要が高いローズヒップ由来ティリロサイドの引き続きの拡販に加えて、腸内環境改善を訴求するサプリメントも好調に推移したのが要因だ。21年第1四半期のヘルスサイエンス事業の業績は1億円プラスの18億円に伸長した。19年実績の19億円に近づいた形だ。

 一方、視点を変えて、ヘルスケア食品を店頭で販売するチェーンドラッグストアの上場企業の業績を見てみると、明暗がくっきりと分かれている。

 業界首位のウエルシアホールディングスは売上を着実に伸ばした。第1四半期(21年3月~5月)の売上高は対前同期年比7%増の2488億円を計上した。

 М&Aによる上乗せ分もあるが、商品全般で好調に売り上げた。前年の巣ごもり需要による食品分野の特需は薄れたが、医薬品や化粧品、調剤などの分野で前年実績を上回っている。

 一方、低迷が続いているのが、インバウンド需要を見込み出店を強化してきたマツモトキヨシホールディングスやココカラファインだ。マツキヨの第1四半期は1374億円と前年同期の1316億円を上回ったが、19年の1458億円には届いていない。主力とする化粧品などは国内需要を取り込み回復の兆しは見えるものの、コロナ前の業況に落ち着くのは時間がかかるとみられている。


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