食用キノコ由来のエルゴチオネイン 認知機能領域で普及へ(2021.8.26)

エルゴチオネイン_新商品 写真①

【写真=LSが届け出た機能性表示食品。近く、DgSでの販売が始まる】

 SR届出が登場
 認知機能領域の機能性表示食品としては珍しい、食用キノコ由来成分の需要が今後高まりそうだ。「たもぎ茸」という北海道ではポピュラーな食用キノコの抽出物に含まれる「エルゴチオネイン」という抗酸化機能の強い成分。研究レビュー(SR)を科学的根拠にした機能性表示食品の届出が先ごろ初めて公開されたことで、エルゴチオネイン含有タモギタケ抽出物を独自素材として製造・販売するエル・エスコーポレーション(東京都中央区)が提案を強化している。

カイゲンが届出実施
 エルゴチオネインを機能性関与成分にした機能性表示食品の届出が初めて公開されたのは、今年1月。サプリメント・健康食品素材の原材料販売を本業とするエル・エスコーポレーション(以下、LS)が届け出たもので、届出全体で初の機能性関与成分であると同時に、認知機能領域では初の食用キノコ由来成分となった。同社が届け出たヘルスクレームは次の通り。

 「抗酸化作用をもつエルゴチオネインは継続的な摂取により、中高年の方の記憶力(人や物の名前などを記憶し、後から呼び起こす能力)及び注意力(物事に対して注意を集中して持続させる能力)を維持する機能があります」(一部省略)。

 LSは、最終商品の臨床試験で届出を実施。その後、SRを同社で行い、ほぼ同様のヘルスクレームについて、最終商品販売会社らへの届出サポートを展開できるようにした。

 そして先月、同SRを活用した届出が初めて公開された。届出者は、一般用医薬品や健康食品などの製造・販売を手掛けるカイゲンファーマ(大阪市中央区)。同社として初となる機能性表示食品の届出に、エルゴチオネインが選ばれることになった。

チェーンDgS採用
 エルゴチオネインとは、キノコを始め穀物などの天然物に含まれる親水性アミノ酸の一種。強い抗酸化活性を持つ物質として知られる。

 認知機能領域に展開できるサプリメント・健康食品素材としては、イチョウ葉由来成分が知られるが、エルゴチオネインの働き方は大きく異なる。LSによれば、動物試験などを通じたこれまでの研究で、神経新生機能、神経障害保護機能、記憶障害抑制機能、抗うつ機能などを持つことが示唆されている。

 また、体内にはエルゴチオネインを取り込むためのトランスポーターが存在する。「OCTN1」と呼ばれるもので、脳では神経細胞に発現するといい、これを介してエルゴチオネインが脳にも選択的に取り込まれる。実際、消化吸収後、血液脳関門を通過して脳に到達することが確認されているという。

 LSでは、こうした特長を持つエルゴチオネインを有効成分として規格化したタモギタケ抽出物の原材料販売と同時に、最終製品の卸売販売などを通じて、国内サプリメント・健康食品市場にエルゴチオネインを普及させることを狙う。

 原材料販売については、SRでの届出が公開されたのを機に提案を強化。「(SR届出の)受理を待ってくださっていたお客様も複数いらっしゃいます。今後、各社からの届出が始まるとみています」と同社は話す。

 一方、最終製品の卸売販売については、同社として届け出た機能性表示食品のサプリメント『記憶の番人』が、全国展開するチェーンドラッグストアに採用された。来月ごろから店頭での本格販売が始まる見通しだという。

 同社ではまた、エルゴチオネインを最終商品市場で展開する顧客の側面支援も積極的に進めていく方針だ。現在までに、女性誌を始めとした一般向け媒体へのパブリシティを始めている。同社として一般消費者にアプローチしながらエルゴチオネインの認知度を高め、それをテコに、対事業者向けの営業活動を加速させたい考えだ。


Clip to Evernote

ページトップ