プラントベース食品 PBFに表示指針 (2021.8.26)

プラントベース食品Q&amp

消費者庁、Q&Aで提示
 植物由来の原材料を使用した植物肉や植物ミルクなどといったプラントベース(植物由来)食品の「表示」に関する考え方を消費者庁が8月20日までにまとめ、食品関連事業者などに向けてQ&A形式で提示した。健康志向などを追い風に、日本でもプラントベース食品の流通が増えているが、法的定義はなく、表示ルールも定まっていない。そうした中で今後のプラントベース食品の更なる増加を見越し、景品表示法および食品表示法の観点から、一定の規制ルールを示した形だ。これにより、今後増える可能性のある表示違反を未然に防ぎたい狙いが透けて見える。一方で、表示に関する一定の指針が示されたことで、事業者が市場形成に向けて一気に動き出す可能性も出てきた。

大豆肉、表示OK?
 「プラントベース食品である『肉』の商品名に例えば『大豆肉』、『ノットミート』と表示することは景品表示法上問題となるか」

 「プラントベース食品である乳飲料の商品名に『オーツミルク』、『ライス乳』と表示することは景品表示法上問題になるか」

 「昆虫食に食物アレルギー表示は必要か」

 消費者庁がまとめたプラントベース食品の表示に関するQ&Aにはこんな設問が計13並ぶ。その回答では、例えば、「オーツミルク」などと表示することの是非を巡っては次のように説明している。

 「代替乳飲料は、牛乳又は乳飲料ではない。したがって、例えば、商品名とは別に、『オーツ麦を使用したものです』、『牛乳や乳飲料ではありません』と表示するなど、一般消費者が、表示全体から、牛乳等ではないのに牛乳等であるかのように誤認する表示になっていなければ、景品表示法上問題となることはない」

 要は、消費者を誤認させない表示の徹底を事業者に求めた形だ。消費者に対しても、プラントベース食品には「全て植物由来の原材料であるもの」がある一方で「一部の原材料や食品添加物に動物由来のものが含まれているもの」などがあるとして、表示内容をよく確認して購入するよう求める注意喚起を始めている。

 プラントベース食品の法的定義は整備されていない。ただ、Q&Aでは、「主に植物由来の原材料で肉などの畜産物や魚などの水産物に似せて作った商品をいう。動物由来の添加物が含まれている場合でも、主な原材料が植物由来である場合は、プラントベース食品に含める」とする考え方を示した。とはいえ、同庁では、これはあくまでも同Q&Aでいうところのプラントベース食品を説明しているにすぎない、としている。

背景に規制改革も
 動物性ではなく植物性の原材料を使用した植物肉や植物ミルクなどといったプラントベース食品は、環境保護意識の高まりや菜食主義者の増加などを背景にした需要拡大が世界的に進んでいるとされる。人口増加などに伴う将来的なタンパク質供給源の不足をカバーする観点から大きく注目する見方もあり、その確保に向けて動き出す国もある。

 日本の食品市場でも存在感が増している。植物肉や植物ミルクを中心に、食品関連事業者が製造・販売をはじめている。ファーストフードなどの飲食店でも、メニューとして提供が始まっている。

 市場規模も増加基調にある。民間調査会社の調べで、アーモンドミルクや豆乳、オーツミルクなど植物性飲料の2020年市場規模は824億円となり、前年比を見ると7%のプラス。21年も3%近い増加が見込まれるという(矢野経済研究所調べ)。

 このように、日本ではもともと植物性食品の健康イメージが高いことも追い風に、プラントベースフードは今後の需要増加が確実視されている。

 一方で、大豆などを原材料にした植物肉は〝肉〟ではないのに肉と表示することは表示法上どうなのか──などといった疑問を、プラントベース食品を販売する事業者は抱いていた。消費者庁では、「事業者から表示に関する考え方をはっきりして欲しいとの要望があった」(表示対策課関係者)といい、そうした事業者の要望に応える目的もあり、Q&Aを作成したとする。逆に言えば、Q&Aを示すことで、そこから逸脱した表示は、景品表示法や食品表示法に違反する恐れがあるなどとして指導などがしやすくなった。

 他方、今回のQ&Aは、「フードテック」をキーワードにした新食品市場の創出に向けた政府としての規制改革の側面も強い。

 河野太郎規制改革担当相は8月20日の記者会見で、プラントベース食品についてコメント。「ニーズが拡大する中で規制が明確でないため開発ができない、市場導入ができないという声が(事業者から)あった。新しい市場を作っていくことがこれからの日本経済に求められる」と語り、消費者庁が今回取りまとめた事業者向けQ&Aは規制改革の一環であるとの認識を示した。

【写真=事業者向けQ&A公表に合わせて一般消費者向けリーフレットもまとめた(出所:消費者庁)】



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