消費者庁調査 ビタミンDの摂取量 未成年に過剰傾向か(2021.9.9)


耐用上限超えの可能性
 幼児を含む一部の未成年が日本人の食事摂取基準2020年版に定められた耐容上限量を超えてビタミンDを摂取している可能性が、消費者庁が実施した調査事業のウェブアンケート結果で浮かび上がった。時に、サプリメント形状食品からの摂取量が多くなっているとみられる。同庁では、成人向けのサプリメントを未成年が摂取すると栄養成分の「摂り過ぎ」になる可能性があるなどとして、消費者への注意喚起を始めた。業界に対しても、未成年のビタミンDをはじめとする栄養成分の過剰摂取を防止するための対応を求めている。

 消費者庁は昨年度、食事摂取基準2020の策定を受けた栄養素等表示値の変更を行うかどうか検討する目的で、栄養機能食品等の摂取状況等に関する調査事業を、業界団体の日本健康・栄養食品協会に委託して実施。未成年者におけるビタミンDを含む加工食品の摂取状況などを調べ、調査結果をまとめた報告書を8月25日に公表した。

 食事摂取基準2020では、ビタミンDの1日あたり目安量を、従来の5.5マイクロ㌘から8.5マイクロ㌘に増やした。これにより、ビタミンDの栄養素等表示値を見直す必要が生じたが、識者らが未成年の過剰摂取リスクを指摘。そのため同庁では、未成年のビタミンDを含む加工食品の摂取状況を調べていた。

 日健栄協がまとめた調査報告書によると、3歳から17歳までの未成年(その保護者含む)約9000名を対象に、直近1週間におけるビタミンD含有加工食品の摂取状況をウェブアンケート形式で調べたところ、同食品を摂取している人は全体の45.7%に上り、そのうち1.1%(47名)が耐容上限量を超えて摂取していると推定された。特に低い年齢層でその割合が高い傾向だった。また、耐容上限量を超えていた人のビタミン摂取量は、サプリメント類からが最も多かったという。

基準の2倍も
 食事摂取基準2020では、未成年のビタミンD耐容上限量について、15~17歳では1日あたり90マイクロ㌘、3~5歳では同30マイクロ㌘などと定めている(18歳以上の成年は年齢階級問わず100マイクロ㌘)。

 耐容上限量とは、「健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限」などと定義されるもの。これを超えて摂取し続けると、過剰摂取によって生じる「潜在的な健康障害のリスク」が高まる、と考えられている。

 同報告書によれば、耐容上限量以上にビタミンDを摂取していた15~17歳の1日あたり摂取量は約165マイクロ㌘と成人の耐容上限量を超えていた。また、6~7歳では、その年齢に定められた耐容上限量の2倍を超えていた。

 消費者庁は、調査結果を重く受け止めた。同庁の伊藤長官は8月25日に開いた記者会見で、未成年のビタミンD含有加工食品を巡る注意喚起を始めることなどを紹介。その上で、調査結果について、「驚きをもって受け止めさせていただいた」「こんなに(耐容上限量を)超えている人(未成年)がいるんだということはやや衝撃であった」などと所感を述べた。

 ただ、このウェブアンケート調査結果の確からしさには微妙な面もある。同報告書では、「回答内容について十分な確認ができなかったため、過大申告と思われる回答が含まれている結果となっている」と明記。その上で、未成年のビタミンD摂取状況の「傾向を一定程度捉えているものの、正確に捉えているとはいえない」としている。

親が勧めてる?
 消費者庁は、8月25日付で健康食品業界団体トップ宛てに食品表示企画課長通知を発出。ビタミンDを含むサプリメント形状食品について、ビタミンDの1日当たり摂取目安量が5マイクロ㌘(ビタミンD栄養機能食品の上限値)を超える商品に関しては、「成人向けに設計されていることを表示する」などといった取り組みを通じ、未成年者が過剰摂取しないよう配慮することを求めた。ビタミンD以外の栄養成分を含むサプリメントについても、同様の配慮を求めている。

 この通知は、日本健康・栄養食品協会、健康食品産業協議会、日本通信販売協会の業界3団体に対して発出されたもの。会員企業らに周知するよう求めた。

 同庁食品表示企画課によれば、日本チェーンドラッグストア協会にも情報提供をした。店頭においても未成年の過剰摂取防止に取り組むよう促す狙いがありそうだ。他に、厚生労働省はじめ日本栄養士会、日本薬剤師会、日本医師会にも情報提供したという。

 同庁が日健栄協に委託した未成年のビタミンD含有加工食品摂取状況を調べる調査では、関連製品のビタミンD含有量表示なども調べた。その結果、ビタミンD配合を根拠にした栄養機能食品以外のサプリメント類では、ビタミンD栄養機能食品の上限値を大きく上回る形でビタミンDを配合した製品が複数、確認されたという。

 もっとも、そうした製品は原則として成人向けに設計されたもの。多くの事業者は「未成年者をターゲットにしていない」(調査報告書)ことがわかっている。

 ではなぜ今回の調査で一部の未成年者が耐容上限量以上にビタミンDを摂取している可能性が示唆されたのか。調査報告書ではこう推測している。「保護者が、食品関連事業者が成人をターゲットに製造している製品を未成年者に摂取させていることが十分に考えられた」

 新型コロナウイルス禍で保護者がビタミDのサプリメントを子どもに与えるケースが増えている可能性も十分考えられそうだ。


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