免疫 表示を巡るエビデンス「考え方」まとまる(2021.9.9)


届出の現状、打破に期待 アカデミアが取りまとめ
 日本抗加齢医学会の姉妹団体、日本抗加齢協会は9月1日、「免疫関係の機能性表示食品の科学的根拠に関する考え方」を公表した。消費者庁の食品表示企画課幹部をオブザーバーに迎え、協会が招集した免疫に関する有識者(アカデミア)チームで検討、取りまとめたもの。特定の機能性関与成分以外に広がりを見せない免疫領域機能性表示食品の届出に関する現状を大きく打開する「考え方」になるか注目される。

オブザーバーに消費者庁幹部
 「考え方」は、日本抗加齢協会のホームページ上に公開された。
 考え方の構成は、①免疫指標②自然免疫・獲得免疫③臨床試験④被験者数──の4項目。全体として文章量は多くなく、あくまでも各項目に関するベーシックな考え方を示した形だ。

 ただ、逆にいえば、ようやく基本的な考え方が示された形。そこがこれまであいまいであったため、免疫領域機能性表示食品の枠組みで届出「受理」実績をあげる機能性関与成分が、『プラズマ乳酸菌』以外に出ていないと考えられる。届出資料の形式確認を行う消費者庁にとっても、一定の判断基準が示されたといえそうだ。

 考え方の①では、科学的根拠として「有用」な免疫指標として、プラズマ乳酸菌で届出実績のある樹状細胞の活性化をはじめ、食細胞活性▽NK細胞活性▽T細胞(CD4T細胞)増殖性・活性化▽分泌型IgA抗体濃度など──を挙げた。

 また、これら以外の指標についても、「科学的根拠が説明できる指標を使用することも構わない」との考え方を示した。その上で、「これらの免疫指標が複数動いていることが望ましい」とした。

複数指標が動くの「望ましい」
 複数の免疫指標が「動いていることが望ましい」とした点は、消費者庁が取りまとめた届出ガイドラインの考え方に則したといえる。ガイドラインでは、機能性表示食品制度では「認められない」表現(ヘルスクレーム)の例として、「科学的根拠に基づき説明されていない機能性に関する表現」を挙げ、その例として、「限られた免疫指標のデータを用いて身体全体の免疫に関する機能があると誤解を招く表現」を例示。一つの免疫指標が動いているだけでは、科学的根拠にはならないとの姿勢を提示している。

 ただ、「考え方」では、単一の指標が動いているだけの場合であっても、「さらに下流に応答した免疫指標に類似した指標が動き、局所及び体全体のクリニカルアウトカムが合理的に説明できれば、免疫全体を調整していることの根拠となりうる」とする考え方を示した。

 加えて、「用いた指標が免疫全体を調整することを科学的に説明できることが重要であり、科学的に免疫全体を調整する作用機序を記載することが必要」だとした。

 一方で、唾液中の分泌型IgA抗体濃度のみを指標にすることは困難だとする考え方を示唆した。唾液中分泌型IgA抗体濃度の取扱いについては「慎重にすべきである」と指摘。「健常人の健康維持増進に係る指標として用いるには課題」があるとしている。

自然免疫のみでも「構わない」
 ②では、自然免疫と獲得免疫の双方を調整していることが「望ましい」としつつも、「自然免疫のみでも構わない」とする考え方を提示した。ただし、自然免疫のみとする場合であれ、免疫全体を調整することを科学的に説明できる必要があるとした。

 ③の「臨床試験」では、免疫指標の活性化と臨床的成果(クリニカルアウトカム)を「同じ臨床試験で評価することが望ましい」とする考え方を示した。

 この点を巡り業界関係者の一部からは、「ハードルが高い」として疑問視する意見も出ている。ただ、この考え方の検討、取りまとめには、オブザーバーとして消費者庁幹部が参加している。同庁の意向が反映された結果と捉えることもできそうだ。

 一方、「考え方」では、両者を同時に評価していない場合の考え方も併せて示した。その場合は、両者を結びつける「合理的な説明が必要」であり、また、「免疫指標とクリニカルアウトカムをつなげる外挿性の説明が必要」だとしている。

 なお、この「考え方」の内容は、今後、必要に応じて見直されていく見通し。「本文書で示した考え方は現時点のものであり、今後の新たな科学的根拠糖により改訂していくものである」との記載が末尾に加えられることになった。

資料 免疫関係の機能性表示の科学的根拠に関する考え方(日本抗加齢協会検討会)
1.免疫指標について
 既に受理されている樹状細胞の活性化に加え、食細胞活性、NK 細胞活性、T細胞(CD4T 細胞)増殖性・活性化、分泌型 IgA 抗体濃度(※)なども免疫指標として有用である。ここに記載している指標以外にも、科学的根拠が説明できる指標を使用することも構わないが、これらの免疫指標が複数動いていることが望ましい。しかし、単一の指標でも、さらに下流に応答した免疫指標に類似した指標(サイトカインなど)が動き、局所及び体全体のクリニカルアウトカムが合理的に説明できれば、免疫全体を調整していることの根拠となりうる。また、用いた指標が免疫全体を調整することを科学的に説明できることが重要であり、科学的に免疫全体を調整する作用機序を記載することが必要である。

※:唾液中の分泌型 IgA 抗体濃度のみでは、健常人の健康維持増進に係る指標として用いるには課題があり、その取扱いは慎重にすべきである。

 また、作用機序とする免疫指標に関して、その指標の欠損症の臨床症状やノックアウトマウス等のデータがあれば記載することが望ましい。

2.自然免疫、獲得免疫について
 自然免疫・獲得免疫双方を調整していることが望ましいが、自然免疫のみでも構わない。ただし、自然免疫のみの場合は、前述したように免疫全体を調整することが科学的に説明できないとならない。また獲得免疫に関しては、疾病予防・治療に結び付かないように記載することが重要である。

3.臨床試験
 免疫指標とクリニカルアウトカムを同じ臨床試験で評価することが望ましい(サブグループにて両者を同時に評価できる場合は評価することでも十分である)。一方、両者を同時に評価していない場合は、両者を結びつける合理的な説明が必要で、免疫指標とクリニカルアウトカムをつなげる外挿性の説明が必要である(あるいは説明できる免疫指標を測定し、科学的な合理性の記載が必要である)。

4.被験者数
 何人とは、規定できないが、クリニカルアウトカムを統計的に説明できる人数が必要である。
注)本文書で示した考え方は現時点でのものであり、今後の新たな科学的根拠等により改訂していくものである。

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