ポリフェノールに革新 〝活性本体〟規格化した新素材(2021.9.23)

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丸善製薬が開発 
 ポリフェノールは吸収されにくいのに様ざまな健康維持増進機能が報告されているのはなぜか──「ポリフェノール・パラドックス」として知られるそうした矛盾に対するひとつの回答を、丸善製薬(広島県尾道市)が新規開発素材を通じて示す。経口摂取されたポリフェノールの腸内代謝に着目し、ポリフェノールの「活性本体」をあらかじめ摂取できる天然物由来の発酵食品素材を開発した。人それぞれの腸内環境に左右されない形で、ポリフェノールが本来持つ機能性を提供する。

 丸善製薬が新たに開発したのは、有効成分としてポリフェノールの一種「3‐(4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシフェニル)プロピオン酸」(以下、HMPA)を規格化したもの。

 HMPAとは、経口摂取したポリフェノールが腸内細菌によって腸内で代謝、変換されて生まれるポリフェノールの一種だ。同社では、「ポリフェノールの活性本体(コアポリフェノール)」のひとつだとしている。

 製品名は『アクティボディRB』。乳酸菌素材を独自に開発するなど、同社がここ10年で深めてきた発酵技術研究を背景に、天然物(米糠)を原料にして開発した。現在までに、製品スペックも固まっており、来月にも上市する方向で準備を進めている。「食品開発展」に出展して提案・販売活動をスタートさせる計画だ。

 ポリフェノールは様ざまな植物に含まれており、その種類も多い。また、その一つひとつに固有の健康維持増進機能のあることが知られる。

 そうしたポリフェノールが持つ多様な機能性の背景には、HMPAの働きがあると同社では見る。

 実際、同社がアクティボディRBについてこれまでに行った機能性に関する基礎研究では、▽抗肥満機能(cAMP‐PDE活性阻害)▽高血圧低下機能(ACE活性阻害)▽美白機能(メラニン産生抑制)▽保湿機能(真皮ヒアルロン酸産生促進)▽血管安定化機能(Tie2活性化)▽抗炎症機能(PGE2産生抑制)──など、幅広い機能性を持つことが示唆されている。

 また、ヒト試験では、食後血糖値の上昇抑制機能と体脂肪減少機能が確認されている。
 体脂肪減少機能は、RCT(ランダム化比較試験)で検証されたもので、摂取12週間後に、腹部の脂肪面積がプラセボ群との比較で有意に減少した。

 同社によれば、このRCT結果は既に論文投稿しているという。
 また、RCTに基づくアクティボディRBの1日あたり有効摂取目安量は、100㍉㌘と少ない。摂取粒数などを抑えた製品設計を可能とする機能性表示食品対応素材が新たに誕生することになりそうだ。

物性にも優れる
 HMPAを規格した食品素材は史上初だとみられる。
 そのため、製剤化(最終製品化)に向けた応用開発もゼロから始まることになる。

 ただ、アクティボディRBはかなり扱いやすい素材だ。風味、溶解性、安定性とも優れているため「どのような商品にも配合可能」だと丸善製薬は語る。

 ポリフェノールには特有の苦味や渋味を有すものが多い一方で、同社によれば、アクティボディRBは、味、香りともに少ない。また、溶解性については、無色澄明に近い状態にまで溶ける物性を持つ。このため、飲料やゼリー類に配合することもできる。

 さらに、機能性表示食品などとして展開する場合に特に重要となるHMPAの安定性については、光、熱の双方に対して高い安定性を保つことがわかっている。このためクッキーなどの焼成工程を経る食品にも配合できる。光に対しては、スーパーやコンビニエンスストアの商品陳列棚よりもはるかに強い光(1万5000ルクス)に対し、90%以上の残存率を示す結果が得られているという。

【写真=ポリフェノールの腸内代謝に着目した新素材「アクティボディRB」の発売予告動画の一場面。丸善製薬の社員らが作成した。YouTube上で全4話が公開中。】

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