にわかに動き始めた厚労省 健康被害情報 対応拡大(2021.10.21)


指定成分以外も情報公開
 厚生労働省がいわゆる健康食品との関連が疑われる健康被害情報への対応を強化する。これに関係し、指定成分等含有食品に関する健康被害情報への対応に当たる専門家ワーキンググループ(WG)の体制を拡充させ、年3回程度のWGを厚労省審議会の一環として開催することを決めた。今後、健康被害情報を事業者から収集する仕組みの構築も進めるとみられる。業界にも対応が求められることになりそうだ。

 厚労省は10月18日、新開発食品評価調査会(薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会 新開発食品調査部会の子会)をおよそ4年ぶりに開催。いわゆる健康食品との関連が疑われる健康被害情報への対応などについて議論した。

 同11日には、同調査会の親会に当たる新開発食品調査部会で、指定成分等含有食品の健康被害情報に対応する専門家WGの設置要綱の一部改正などについて議論していた。18日の調査会では、その報告を受けつつ、委員と厚労省の間でさらに深い意見交換が交わされた。

 WG設置要綱の一部改正では、同WGは指定成分等含有食品以外に、いわゆる健康食品に関する健康被害情報への対応にも当たることを明確にした。また、従来は4名の専門家で構成していたところを、参考人として新たに3名の専門家を迎え、対応体制を拡充した。事務局は、これまで通り厚労省の新開発食品保健対策室(食品基準審査課内)が担当する。

 WGの体制拡充の狙いについて厚労省は、健康被害情報の届出などを事業者に法律で義務付けている指定成分等含有食品に関し、「症例の蓄積とともに報告される症状も多岐にわたっていくことが予想される」と説明。実際、指定成分等含有食品に関するこれまでの健康被害情報件数は累計で347件(9月末時点)に上る。

 ただ、昨年6~12月までの情報件数は累計198件だったのに対し、今年は1~9月までに同102件と減少傾向。WGの体制拡充の狙いとしては、いわゆる健康食品に対応する目的が大きいと考えられる。

 厚労省は今後、いわゆる健康食品との関連が疑われる健康被害情報について、WGで症例確認などを行った上で、厚労省のホームページに公開する。改正食品衛生法に基づき創設された指定成分等含有食品制度でも、同様の対応を行っており、制度を施行した昨年6月以降の被害情報件数、報告された症状などの詳細を公開している。

 WGが健康被害情報への対応に当たる「いわゆる健康食品」の範ちゅうには、特定保健用食品や機能性表示食品など保健機能食品も含まれることになる。

 いわゆる健康食品に法的定義はない。ただ、食品安全委員会では、「医薬品以外で経口的に摂取される『健康の維持・増進に特別に役立つことをうたって販売されたり、そのような効果を期待して摂られている食品』」と定義しており、保健機能食品を除外していない。厚労省では、この定義を原則そのまま採り入れる考えを示している。

 公開する被害情報は、製品名が分からないよう配慮する。指定成分等含有食品も製品名までは明らかにしていない。ただ、情報が上げられた製品に含まれる「主な成分等」を公開する。配合素材・成分に明らかな特徴があった場合、製品名が特定される恐れがある。また、そこに記載された成分・素材名をめぐり「風評」が生じるリスクも強く懸念されそうだ。

 厚労省では今年度内にWGを開催したい意向を示している。いわゆる健康食品との関連が疑わる健康被害情報の公開がいつから始まるかは不明だが、WG開催前に公開される可能性がある。また、公開される被害情報は、指定成分等含有食品と同様に、昨年6月以降に厚労省に上げられたものが対象となる。

 厚労省によると、指定成分等含有食品との関連が疑われる健康被害情報への対応に当たるWGは、これまでもいわゆる健康食品の健康被害情報の症例確認などを行っていたという。その件数自体は少ないとみられるが、厚労省が2002年(平成14年)に発出した通知「健康食品・無承認無許可医薬品健康被害防止対応要領」に基づき、都道府県等からいわゆる健康食品に関する健康被害情報が厚労省に上げられていた。

 報告件数は「月に1件あるか、ないか」(新開発食品保健対策室)と多くはない。だが、健康被害情報をより広範に収集していく仕組みが整備されれば、今後増えていく可能性も考えられる。18日の調査会では、複数の委員から、サプリメントなど食品が原因となったことが疑われる肝障害が少なからず発生している可能性を懸念する声が上がっている。

情報収集体制、今後の焦点に
 18日の調査会の中で厚労省・新開発食品保健対策室の今川正紀室長は、「健康食品に関する制度をより充実化させたい」との思いを語った。

 サプリメント・健康食品が多くの消費者、生活者に受け入られている現実を真正面から受け止めていなければ出てこない発言といえる。

 だからこそ、安全性の確保が急務だと考えている節がうかがわれた。いわゆる健康食品の「表示」に関する所管は消費者庁だが、「安全性」「製造・品質管理」を担当するのは厚労省である──そうした姿勢を改めて鮮明にさせたとも受け取れる。

 今後の焦点は、いわゆる健康食品との関連が疑われる健康被害情報の収集体制を厚労省がどう構築していくかだ。そうした情報はまずは事業者の下に集まる。

 厚労省では、いわゆる健康食品をめぐり過去に発出した通知の一部改正を示唆しているが、果して実効性を確保するのにそれで十分かどうか。

 指定成分等含有食品がそうであったように、被害情報収集のみならず製造・品質管理に関しても何らか新たな方策を打ち出す可能性も考えられる。今後しばらく厚労省の動きから目を離してはならない。


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