「機能性」、届出急増の目的 常磐植物化学研究所 立﨑 仁 社長(2021.10.21)

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迅速な届出支援 そして福利厚生への貢献 
 1949年(昭和24年)創業の植物抽出物メーカー・常磐植物化学研究所(千葉県佐倉市)。老舗の原材料事業者として業界では以前から知られた存在だが、ここにきて存在感がより高まっているのではないか。それが顕著なのは機能性表示食品だ。同社としての届出件数は現在およそ40件。原材料事業者では最多とみられる。顧客の届出サポートにも積極的だ。機能性表示食品対応素材を10以上取り揃え、公開ベースの届出件数は現在160を超えるという。そうした中で今年7月、東京商工会議所主催の「勇気ある経営大賞」で優秀賞に選ばれた。以前とはどこか違う気がする「tokiwa」の事業戦略を立﨑仁社長に聞いた。

──常磐植物化学研究所として機能性表示食品を10月13日時点で38件も届け出ています。目的は?

 「お客様からの要望に応えるためです。そのために我々として研究レビューなどを行い、届出資料を作成し、届出実績をつくっておく、ということ。ダブルヘルスクレームが当たり前にもなっていますから、お客様からご相談いただく様々なヘルスクレームのパターンに適応できるように努めています。

 今は変化のスピードがとても速い。だからお客様の要望にすぐさま対応できるようにする必要がある。それに、従来の事業領域が曖昧になりつつありますから、我々のような素材メーカーにしても、素材開発だけを地道に行っていればいいという時代ではなくなった。素材の提供だけでなく、お客様のマーケティングや商品企画のお手伝いもできないと、そもそも素材が採用されない時代です。その上でエビデンスが必要。以前と比べれば、かなり高度なことが求められていると感じています」

──現在までに届け出た38件のうち20件以上が『健康経営サプリ』と商品名に銘打たれています。これにはどんな意味があるのですか?

 「健康経営サプリの届出には2つの目的があります。まず、当社として届出実績をつくり、お客様の届出をスピーディにサポートすること。次に、福利厚生です。その二つの両輪を回していくことを目的にしたもので、我々として販売していくわけでありません」

──福利厚生ですか。具体的に聞かせて下さい。

 「経営者の多くは新型コロナ禍をどう乗り越えるか考えたはずです。私もそうで、社員をどう守るかを考えた。守るべきことには『健康』もあり、他の企業と同様に感染防止に努めました。全社員がコロナワクチンの2回目の職域接種をお盆前までに終えました。ただ、それらはどの企業でもやっているようなことですから、当社なりに何かできないかと考えた。そこで思いついたのが、社員の健康維持増進のために、当社で開発したサプリメントを無償提供することでした。

 実際に提供を始めたのは昨年の9月ごろからです。外部に製造委託した製剤を小分けにし、社員それぞれが必要なサプリメントを職場で自由に摂取できるようにした。それを知った外部の企業が、ヘルスケア産業外の企業なのですが、「我が社でも同じサービスを社員に提供したい」と。であれば我々としてご提供しようということになり、あくまでも企業が取り組む福利厚生をサポートする目的で、「健康経営サプリ」としてブランド化しました。今、経営者にとって健康経営は大きなトレンドになっていますから、多くの企業に導入してもらいたいと考えています」

──なるほど。しかしそれにしても、以前の常磐植物化学研究所からすると考えもつかないような取り組みとも思えるのですが。

 「いや、当社は元々、植物化学の研究・技術開発を通じて社会の福祉増進に寄与することを目的に創業されました。創業来、そこは全く変わらない。実際、我々の地元である佐倉市の小・中・高校生を対象に、植物を中心とした科学教育に貢献する取り組みを以前から進めています。今年12月には我々の主催で、理化学研究所の植物化学専門家を招き、地元の中学生以上を対象にした『佐倉サイエンス・アカデミー』を開催します。

 創業者の一人である私の祖父も、先代の父も、そして私も、植物を通じて社会を健康で豊かにしていくことを目標にしている。我々が得意とする植物に関する研究・技術開発を通じて人々の健康維持増進に寄与することは、我々が果たすべき社会的な使命だと考えています。機能性表示食品に関する取り組みにしても、その強みを生かしながら、その使命を果たすために行っていることです。そのようにしてしっかりと収益を上げ、収益の範囲内で子どもたちへの科学教育のサポートなど社会貢献活動を進めていく。それは結果的に、我々の事業の成長にもつながっていきます」

──東京商工会議所の「勇気ある経営大賞」で優秀賞に選ばれたことについて伺います。経営難を乗り越え、「人財・研究を強みとしたソフト型経営への転換」を果たしたことが受賞理由とされています。

 「この賞は、『過去に拘泥することなく、常識の打破や高い障壁に挑戦し、高い理想を追求するなど、〝勇気ある挑戦〟をしている中小企業』を顕彰するものです。経営的に苦しい中でも、我々の強みは研究・技術開発力だと信じてやってきました。それが機能性表示食品制度の誕生で花開き、2018年以降は業績を押し上げることにもつながりました。

 2010年に社長就任した後、やりたいことが出来ない時期がありました。しかし今は違います。10月8日の創業記念日に合わせ、本社工場に新棟を増設し、大型のスプレードライ機器を新規導入しました。そうしたことが今はできる。今後も研究・技術開発力をさらに磨いていきながら、2029年の創業80周年までに、売上高50億円、経常利益4億円をめざします」

【写真=左:常磐植物化学研究所 立﨑 仁 社長 右:先ごろ開催された食品開発展に出展した常磐植物化学研究所が掲示したパネル。10月13日までにクワ葉エキス末の届出も公開された。届出件数が現在60件超に上るラフマ葉抽出物「ベネトロン」(同社登録商標。ラフマ由来ヒペロシド・同イソクエルシトリン)に関しては新たに「注意力」のヘルスクレームで届出準備を進めている。現時点では届出中のゲッケイジュ葉抽出物「ローレッシュ」(同登録商標)については、歯ぐきの健康に対する機能性を表示できるようにする。同素材はオーラルケアが全身の健康維持増進に資するという一定の科学的根拠もある説を背景に開発したもの。今後もエビデンスを積み上げ、ヘルスクレームの拡充をめざす考え】



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