総選挙の行方と影響 投票はどこと誰に 食品の消費減税に備えを (2026.1.22)
「松が取れぬうちに」という慣用句の通り、年初早々1月9日の読売新聞の報道から衆議院の解散総選挙が取り沙汰され、1月19日に高市早苗総理が正式表明した。これに並行して立憲民主党と公明党による新党結成、菅元総理の政界引退などさまざまな動きも生じている。
新たな構図となり神のみぞ知る選挙結果はさておき、可能な範囲で健康産業への影響とその行方を分析してみよう。
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昨年10月に発足した高市政権。憲政史上初の女性宰相の誕生、明るく積極的な言動で、国民的な人気は高く、支持率は各社の調査で7割を超える高水準。これに自民党の各選挙区の情勢調査が加わり、通常国会の冒頭解散との総理判断に繋がったとみられる。
高市政権のキャッチフレーズは「日本を強く、豊かに」。積極財政で景気を刺激して、経済と消費を活性化させる方針だ。これに基づき、18兆円という異例の大規模補正予算を組んだ。中には「攻めの予防医療」など健康産業の推進を思わせる項目もあり、業界にも期待が膨らんだ。
ただ、現状では思惑は空振りだ。医療・介護などの分野には直接的に補助金が入り、財政出動の恩恵を享受。医療の外縁に位置する健康産業にはプラス効果は出ていない。むしろ厚生労働省と消費者庁ではサプリメントの定義化と規制が浮上。医療分野とは逆に、規制強化による低迷・停滞が懸念される。
現状では、健康産業の情報が官邸に届いていないという側面もある。政権発足後、3カ月でまだ影響を享受した業界の方が少ない。積極的な経済対策は、本予算後や骨太方針によるはずで、まずは高市政権の「信」を問うこととなる。これを業界としてどう捉えるか。
野党は立憲民主党と公明党の合併による中道改革連合の発足というドラステックな展開となった。ただ、狙いは外交内政ともに強まる右傾化へのアンチテーゼと、選挙戦略という面が大きく、健康産業への影響は未知数。これまでの立憲のスタンスは、ニュートラル、ややネガティブで業界的にも接点が弱く、積極的支援というムードではなかろう。オーガニックなど健康産業に期待を持たせる政策を掲げていた参政党も実際の政策が目立たず、期待外れである。
党派のみならず政治家個人でもしっかりと政策と言動をみる必要がある。業界にとっての痛恨事は菅義偉元総理の政界引退だ。安倍政権の官房長官として機能性表示食品制度の創設に携わり、その後も紅麹事件の軟着陸をサポートするなど「継続的に制度を守りフォローしてくれた」(関係者)。安倍総理が凶弾に倒れ、その後裏金問題で安倍派が解体するなかで、総理経験者でもある菅元総理は業界を知る貴重な存在だった。
現状、健康産業業界を知る政治家の筆頭は加藤勝信衆議院議員だ。機能性表示食品への思い入れも強く、厚生労働大臣を3度も経験した自民党厚労族の中心人物。今後も頼れる重要な政治家だ。
現職の上野賢一郎厚生労働相、黄川田仁志消費者相の動向も気になる。両大臣ともサプリメントのあり方をめぐる検討のキーマンであり、「規制強化には慎重」(関係者)だという。黄川田大臣は昨年末に日本通信販売協会と面会するなど既に業界との接点もあるようで、業界として理解支援が期待できる大事にしたい議員であろう。
若手では、自民党の消費者問題調査会の事務局長を務めた三谷英弘法務副大臣、小林史明前デジタル副大臣が注目だ。三谷氏は、弁護士出身で法制度に詳しい一方で、健康産業やコンテンツビジネスなど新しい成長産業に理解が深い。小林氏は、ITに加え、化粧品、サプリの規制緩和に関心を持ち、業界とのパイプもある。両氏とも今後のために必要な政治家だ。
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選挙結果はこれからだが、選挙公約から健康産業に大きく影響することが明白なのは「食品の消費減税」だ。中道改革連合は、恒久的な食品の消費減税を掲げた。
これに対抗するかのように自民党も高市総理が2年という時限を定めた食品の消費減税に言及。政権がどちらに転んでも食品の消費税がゼロとなる可能性が高まっている。サプリメントは食品の中では単価が高いため、減税の時期や期間でニーズや購買に影響する。減税で製品の実質価格が下がるのは業界で初の経験。早めのシュミレーションが必要であろう。
まずは業界で働く一人ひとりが健康産業振興という視点で、どこを、誰を応援投票するかとの意識を持つことが必要だ。総選挙は我々のビジネスにも大きく影響する。