貫く棒の如きもの 政官財で産業振興 化粧品競争力会議をモデルに(2025.12.25)


 「去年今年貫く棒の如きもの」(高浜虚子)。瞬く間に一年が過ぎ、新しき年を寿ぐ。個人も企業団体も新たな希望に満ちる時であろう。とは言え、虚子の句の通り、時も年も繋がっている。新年に起こることは、旧年の結果。業界も同じだ。健康食品業界はサプリメントのあり方が岐路となろう。一方で新たな取り組みと結束で未来を拓く動きを見せるのが化粧品業界だ。政官財に報道まで協力して産業振興を図ろうとしている。これは健康食品業界の未来にも参考になるだろう。

 「化粧品産業と政府の関係性は歴史的に、安全性と効能に関する規制の観点から主に構築されており、産業振興の観点においては希薄であった」。

 12月8日に経済産業省で第一回が開催された化粧品産業競争力検討会。設置の目的を記した文書にこうした記述がある。

 冒頭の化粧品を健康食品に読みかえるとまったく同じことが言える。

 紅麹事件を契機に安全性にはさらにテコ入れが入るが、産業振興の政策は欠けている。実際、健康食品業界にはまだ明るさが戻っていない。

 今回の化粧品産業競争力検討会が画期的なのは、政官財学が力をあわせて化粧品業界を盛り上げようという意図と方向性が明確である点だ。

 この検討会の音頭取りと舞台は経済産業省。多くの人材を官邸に送り、高市政権の経済政策の舵取りを担う。本来、化粧品の所掌はルールを定める厚生労働省。しかし、経済産業省が出張ってきている点に、意気込みが現れている。

 検討会のメンバーにもこれが反映されている。最大の業界団体、化粧品工業会から資生堂、個社としてコーセーが名を連ね、このほか、原料、OEMメーカー。さらに流通サイドも参加する。コミュニティサイトのアイスタイル、業界誌国際商業編集長も検討会に参加する。化粧品業界の総力を結集した布陣だ。

 この動きに政治も連動している。「J‐Beauty産業研究会」という議員勉強会が結節点だ。自民党の衆議院議員、林芳正氏が代表世話人、小林史明氏が事務局長を務めており、11月には、今回の検討会のメンバーを呼んで、化粧品業界の課題を検討している。この席には規制サイドである厚生労働省も出席して、広告規制等を説明している。

 なぜ、ここへきて政官財の座組が急浮上したのか。化粧品業界はマイナス成長に直面しているのだ。検討会の資料にもあるがコロナが業界に影を落としており、国内出荷額はコロナ前の1.8兆円から1.4兆円に減少。輸出も0.8兆円から0.4兆円にシュリンクした。一方で世界の化粧品市場には70兆円で年率5%程度成長しており、日本は負け組となっている。最大手の資生堂が今期、500億円の赤字予想であることがこれを象徴していよう。

 「まずは国内では効果効能の規制緩和を行い新カテゴリーの製品開発を育成。国外は国際規制に適合した製品の輸出振興」。一連の動きをアレンジする関係者は、目的をこう明かす。業界が一丸となり、政治がバックアップ。さらに行政が仕組みをつくり、情報産業が応援とするとなれば、実現性は高いであろう。
 健康食品産業で11月から業界各社に大きな影響を与えるサプリメントの定義と規制のあり方が消費者庁で議論されている。しかし、業界の関心は低い、業界団体のヒアリングも説明調であり、規制ありきの流れだ。化粧品のように産業振興の視点が決定的に欠けている。このままでは、単に新たな規制が科されるだけだ。多くの企業は規制が始まる直前や後に、自社への影響の大きさに気づくことになろう。

 なぜこうなるのか。一つは業界的に規制に慣らされていることだ。冒頭の記述に戻ると、化粧品よりも健康食品は規制先行で産業振興の観点は希薄だったと言える。唯一とも言える例外は、安倍政権が発足させた機能性表示食品制度だろう。ただこれも政官財のユニットによる成果ではなく、政治主導による僥倖だ。

 もう一つはグランドデザインの欠如だ。規制官庁である消費者庁や厚生労働省との対応にエネルギーを使っており、産業振興を図るために政治や他省庁を巻き込む視点に欠けている。
 華やかで業界成熟度が高いように見えた化粧品業界も実際は規制でがんじがらめ。ようやく国の政策として振興策の検討が始まった。

 サプリメントのあり方という根幹を議論するいまこそ、健康食品業界も政官財が一体となったユニットの構築を目指すべきだ。それこそが、今年来年だけでなく、この先もずっと業界を発展させる「棒の如きもの」となろう。

続きは「健康産業流通新聞」本紙・電子版で


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