売り方規制の憂うつ 通販さらに規制も 政権方針や経済情勢と逆行(2026.3.12)
昨年末以来、業界はサプリメントの定義の行方を注視している。新たな規制に繋がる可能性を危惧しているからだ。それと並行してもう一つの懸案が頭をもたげているのにお気づきだろうか。売り方、マーケティングへの規制だ。具体的には特定商取引法の改正論議だ。今回は特に通販特有の売り方やECに関する問題がクローズアップされている。健康食品の売り上げは7割近くが通販経由とされ、売り方への新たな規制は影響が大きい。この動向もベンチマークして意見表明していく必要があろう。
上位100社6687億円で3.4%減。24年度の健康食品通販の売上高は紅麹事件の影響が残り、2年連続のマイナス成長となったようだ。3月5日付けの通販新聞がこう報じている。
紅麹サプリの健康被害の原因は小林製薬の製造管理の不備から生じた青かびであり、業界固有や全体の問題ではないことは明白。なのに通り売上減が2年近くも続く。なぜか。
理由は健康食品の流通は通信販売がメーンであり、紅麹事件は通販を支える「定期顧客」を減少させたからだ。定期が大きく崩れると当然将来見込んだ売り上げも消える。これの補充も風評の影響で、思うようには新規顧客が取れない。健康食品通販の回復は3―5年のスパンと指摘されていた。
今年から通信販売を規制する特定商取引法の見直しが消費者庁でスタートした。具体的な論議には入っていないが示されている論点からは嫌な兆候と予感しか浮かばない。
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大小に分けて現状示されている論点をみてみよう。マクロでみると今回の検討の最大のポイントは、通販とECを分けて考えるべきではないかという点だ。
カタログやダイレクトメール、テレビなどのこれまでの既存の通販とインターネット経由の通販では、広告・勧誘の在り方が異なるというのがその論拠だ。特にネットはSNSやチャットで勧誘されることがあり、これについて「不意打ち性」が高いと指摘。電話勧誘販売などと同列に扱うべきとの考え方が垣間見える。こうした背景から、通販等を規制する特定商取引法とは、別にECだけを別途のルールで規制する新法の必要性を指摘する向きもある。おそらく行政側の狙いはここにあろう。新法制定、しかも規制法をつくるのは、行政官にとって、最大の功績で勲章だからだ。
しかし、「不意打ち性」を理由にEC新法とはあまりに論理に飛躍があろう。いきなりかかってくる電話のアポセールスと、意識的に画面を開き、特定のサイトを指定してみているSNSやチャットでの広告や勧誘を同列に扱うのもおかしな話である。突然度、迷惑度がまったく異なるからだ。そもそも不意打ち性があるにせよ、電話であれば切ればよい。SNS等であれば、見るのを止めればいい、本来的には受け手の問題も大きい。
既に特定商取引法があり、新たにEC新法を制定する必然性は低い。どうしても必要な規制は、特商法に組み込めばよい。さらに健康食品事業者目線で言えば、広告は、景品表示法等でも規制されており、この上EC新法で規制すれば、広告規制の重複、「重畳性」はさらに高まる。「屋上屋を重ねる」とは、このことだ。
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ミクロで取り上げられているのは「ダークパターン」だ。インターネットの動画等で、煽りや心理的なくすぐり等を通じて、購入を強いる方法である。典型的な例に挙げられているのが先に触れた「定期購入」への誘導。初回無料や大幅値引きなどを餌に契約したら、二回目以降に法外な値段を要求されるケースだ。「今だけお値引き」などを時間制限してカウントが減っていく動画とともに見せる手法、「先着〇〇人」などもダークパターンとされる。
これも果たして法律で規制すべきものなのか。タイムサービスやハッピーアワーなどはスーパーなどの店頭や飲食店でも定番化だ。殊更、ネットだけを取り上げて問題視する話なのか。定期購入については、最終画面で条件等を明示するように規制が変わったばかりだ。
社会全般に目を転じれば、米国関税、イラン戦争などで円安、エネルギー価格高騰で物価上昇は避けられない。そうした中で高市政権は経済成長を第一目標に掲げる。この政府方針の中、消費者庁は新たな規制で売り方にブレーキをかける。業界には憂うつな日々が続くが、きちんとこれに抗せねばならない。それは業界団体の役目である。
特に日本通信販売協会と新経済連盟に期待したい。