化粧品業界の強かさ 高市総理に面談 規制緩和、業界振興を加速(2026.3.26)


 「抱きつき戦術」でトランプ米大統領との首脳会談を成功させた高市早苗首相。振る舞いに否定的な意見もあるが、戦禍を避けた金星であろう。これとは逆に、高市総理に絶妙のタイミングで抱きつき、好ポジションを確立させた業界がある。昨年から規制緩和と産業振興の旗印を掲げた化粧品業界である。これまで経緯や座組、進め方をみると強かで健康食品業界も見習う点が多い。
 化粧品業界は健康食品業界からロールモデルと目されていたと言ってよいだろう。全体を傘の下に置く日本化粧品工業会という大組織がある。そこに資生堂、ポーラ、花王、カネボウ、コーセーという老舗で大きな売上高を持つ企業を核に集まり、担当者などが密接に意見交換、行政とも協調しながら事を進めていく。業界で問題が生じた際もこのスキームが機能し、業界内に対応策を伝えると共に、対外的な発信も担う。

 秩序は保たれていたが業界全体から見ればダイナミズムが欠けていた面もある。それを象徴するのが売上規模だ。経済産業省の統計では、24年度は1.4兆円(国内出荷額)でコロナ前に比べて、4千億円減。少子高齢化で化粧人口が減り、国内市場は厳しい。一方で韓国コスメの台頭など海外勢からの攻勢も強まる。消費者にアピールする化粧品効能は56に限定され、薬用化粧品(医薬部外品)でも新しい表示が出ない。資生堂の業績も冴えず、沈滞ムードもあった。
 ただ、水面下では新たな取り組みへの布石を打っていたようだ。嚆矢となったのは政治との取り組みだ。昨年6月に自由民主党の林芳正議員などが「J‐Beauty産業研究会」を設立。女性議員なども参加して、化粧品を含む美容産業の課題などを議論している。日本化粧品工業会も出席しており、政治と業界側がタッグを組んで場をつくったと見てよかろう。

 二の矢は行政だ。昨年12月に経済産業省が「化粧品産業競争力強化検討会」を新設。これまでの行政と業界の関係性が規制ありきで産業振興の視点が希薄という認識の下、課題を整理し海外展開などに取り組むという目標を掲げた。

 なぜ、経産省が出張ってくるのか。意外であろうが化粧品は同省のテリトリーでもある。生物化学産業課が所管している。厚生労働省が薬機法により化粧品の効能効果を規制しているが、製品は個別許可ではない。振興は経産省、規制側は厚労省という建付けであり、この構図をうまく利用して、業界が経産省側を動かしたと思われる。実際、検討会の委員も業界やその関係者だけで厚労省や消費者庁のそれとは顔ぶれも雰囲気もまったく異なる応援団ばかりの「ホームゲーム」だ。

 三の矢が政治行政のトップである内閣総理大臣との面談となる。

 3月13日の午後2時から23分間、日本化粧品工業会の会長でコーセーの社長である小林一俊氏が高市早苗総理と面談している。会談は新聞各紙の総理動向に載っただけで、粧工会もコーセーも会談のことについて一切公表していない。

 普通に考えれば衆院選挙に大勝し、国民人気も高い今を時めく総理との個人面会を業界的にも企業的にもアピールしたくなるところだ。なのに敢えて沈黙している点に深謀遠慮が伺える。反対勢力をにらんで、規制緩和の具体的なメニューが固まって、揺るぎない形にするまで諸々の情報を公表せず、タイミングを計っているのであろう。

 ただ、客観的に見て、今の高市総理に会って面談出来たということは、それの事実だけで「勝負あり」と言える。20分もの会談をセットして、その場で高市総理が業界の求めに応じない訳がなく、激励賛同を受けたに相違ない。これは特に規制を差配する厚労省には強力な圧力になろう。他の反対勢力も「総理が認めたお墨付き」となれば、表立って反対運動や異論は挟みにくい。

 予算審議や中東情勢で忙しく、産業界との面談も少ない高市総理にこのタイミングでなぜ会えたのか。関係者は「コーセーが以前から高市総理と接点があったのでは」と推測。厚労省関係者は「官邸にいる経産省OBの今井参与の差配では」とする。いずれにせよ、ロビーとしては絶妙かつ効果的だ。

 安倍元総理がサプリメント業界を後押しする機能性表示食品制度を創設し、その後継を自認する高市総理が化粧品の規制緩和と振興をバックアップする。不思議な歴史の流れも感じる。我々の業界も隣の芝生をうらやむだけでなく、進行中のサプリメント定義問題も高市案件として一気に規制緩和と産業振興の波に乗せたいところである。

続きは「健康産業流通新聞」本紙・電子版で

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