サプリ大手の新戦略 「老化」表示が登場 ブランドの一気通貫も(2026.4.23)
春過ぎて夏来にけらしーとの百人一首ではないが、初夏へ向け商戦が動き出した。イラン戦争による原油不足という生活や経済全般への不安要素は残るが、ここ数年の停滞を吹き飛ばす新風を期待したいところだ。なかでもファンケルとサントリーの新しい動きは注目だ。制度やマーケット、業界の未来を拓く要素が内在しているからだ。
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「本品にはキンミズヒキ由来アグリモール類が含まれるので、老化細胞(分裂が停止し、体内に蓄積する細胞)に働きかけることにより、活気・活力の低下や疲れを感じやすい中高年の前向きな気分(生き生きする、積極的な気分、活気がわいてくる、やる気)を維持する機能があります。また、日常生活における一時的な疲労感を軽減する機能があります」。
4月10日に公表されたファンケルの機能性表示食品、ウエルエイジプレミアムの届出表示だ。
業界関係者にとって驚きは「老化」が届出表示に記載されていることだ。この言葉は薬機法違反を取り締まるバイブルである四六通知に不適切な事例として明記されている。薬事当局の解説や指導でもサプリメント等での「老化」の訴求は、再三にわたりNG事例とされてきた。要は禁じられた言葉だった。
それが今回、堂々と機能性表示食品の届出表示、オフィシャルな形で登場した訳だ。
ではなぜ、老化という言葉が使えたのか。最も重要なファクターはエビデンスであろう。ファンケルはキンミズヒキアグリモール類の摂取で老化細胞が減少することを二重盲検法で確認している。老化細胞を図る指標も確立している。こうしたエビデンスの積み上げが薬機法の高い壁に穴を開けたといえよう。
もう一つのファクターは今回の表示が「老化細胞」となっていることだ。四六通知のNG例は正確には「老化防止」。言葉の組み合わせがポイントと思われる。そもそも「老化」は疾病ではなく、エビデンスさえあれば、可能性はあったのだろう。
一方で老化細胞(セノリティクス)への研究も食や薬、医療の分野で全世界的に進められている。今回、日本では「老化細胞に働きかける」表示が認められた訳で市場も活気づくはずだ。
まずはファンケルがこれをテコにどのようなマーケティングを展開してくるか注目される。
20年にキリンホールディングスは「免疫」。今年ファンケルは「老化」。キリングループで業界的に渇望されてきた2つのパワーワードの封印を解いたことは、評価に値しよう。
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「飲むサプリ」。サントリービバレッジ&フードは、グループのサントリーウエルネスが展開する「ロコモア」「セサミン」のブランドを冠とした飲料の展開を4月14日から開始した。TVCMなど積極的な広告展開もスタートした。
サプリメントで培ったブランドを飲料に波及させて相乗効果を狙う戦術で「新価値創造プロジェクト」の第一弾という。
背景にはサプリの利用率が3割にとどまっており、特に40~60代には錠剤・カプセルタイプのサプリメントの利用にハードルがある。このバリアーを日常の水分補給の延長である飲料という形で突破するのが今回の「飲むサプリ」だという。摂取の生活シーン、形態、売り場などサプリメントの新しい可能性を広めるもので、この取り組みも注目であろう。
さらにサントリーは4月15日にOTC販売の大手である第一三共ヘルスケアを2400億円で買収すると発表した。これにより、グループで展開するヘルスケアカテゴリーは、「OTC」「サプリメント」「飲料」と3つに広がることとなる。
カテゴリーが横に広がる一方で、ブランドを通じて、一気通貫の縦のラインも構築できる。
具体的に言えば、膝のケアをイメージ訴求できる「ロコモア」で「OTC」「機能性表示食品」「飲料」と3つの製品を展開。これを鑑みれば今回の「飲むサプリ」は端緒に過ぎないとも言えるだろう。
ヘルスケアの領域で医薬品とサプリメントを両軸での展開は、製薬サイドからの動きが中心だった。あくまでOTCを中心にサプリを配置するという構図だ。一方でサントリーはそれぞれを並列に配置して、ブランドという軸で繋げる形を志向する戦略を描いているようだ。この取り組みは生活者の実際の感覚に近いと思われる。ブランド力を持つ大手ならではの先駆的な取り組みであろう。
大手が動けば市場も動き、消費者も動く。未来のニーズを捉えたものであればなおさらだ。どういう成果を上げるかは注目だ。