供給伸ばすシャンピニオン(後) 抗菌ペプチド誘導活性で新知見(2013.12.12)


 シャンピニオンエキスをリコムが開発したのは1980年代前半。その後しばらくは動きの鈍い時期が続いたものの、94年に乳業メーカー大手が同素材を配合した茶系飲料を発売。これが臭いを気にする若い女性のニーズを掴み、ヒット商品化したことで、配合製品の市場投入が相次いだ。

 当時を知る業界関係者によると、その乳業大手がシャンピニオンエキスの採用を決めた背景には、「有効性データがしっかりあった」ことがあるという。リコムでは同素材が思うように動かぬ時期でも機能性研究に力を入れていた。

 研究に注力する同社の姿勢は現在も変わらない。近年では、作用メカニズム研究にとりわけ力を入れている。

 シャンピニオンエキスを摂取すると、便臭、口臭、呼気臭、体臭といった臭いの減少に働くのはなぜか──まず、アンモニアやメチルメルカプタンなどといった腸内腐敗産物を減少させることがある。一方、腸内腐敗産物を減少させるメカニズムとしては、タンパク質などを分解することで腸内腐敗産物をつくる原因となる腸内有害菌(ブドウ球菌やクロストリジウム菌)を減少させる一方で、善玉菌のビフィズス菌を増やすことがヒト試験で分かっている。

 では、腸内有害菌を減少させる理由とはなにか。長らく不明のままとされていたが、最近になりその一部が明らかにされつつある。シャンピニオンエキスには抗菌ペプチド誘導活性作用があるという新知見がそれだ。

 抗菌ペプチド、別名ディフェンシンとは、植物や動物など、様々な生物種が自ら産生するとされる生体防御物質だ。細菌やウイルスなどに対して広範囲な抗菌作用を持つと言われているが、シャンピニオンエキスの摂取に伴い、その産生・誘導が促進される可能性のあることが最近になり確認された。これにより、腸内有害菌を減少させるとともに腸内環境を改善し、結果的に臭いを抑制している可能性がある。

 「摂取されたシャンピニオンエキスが腸内に到達した場合、そこで(有害細菌など)細菌と共存する状態になり、その刺激により小腸上皮から抗菌ペプチドの産生・誘導が促進される可能性が示唆された」──試験を実施したシャンピニオンエキス製造元のリコムほか江口文陽・東京農業大学教授らは得られた知見についてこう考察する。またこの知見は、インフルエンザなど、感染症の予防効果の可能性も示唆されるものだとして期待を寄せてもいる。

 リコムでは現在、シャンピニオンエキスが抗菌ペプチドの誘導を活性化させるメカニズムや関与成分の特定を進めている。病院や介護施設内での利用という観点から見ると、便臭改善作用に感染症予防作用が加われば、より有用性が増す。健康食品としての利用という面から見ても、とりわけ関与成分の特定は、特定保健用食品としての道を新たに開くものになるかも知れない。

【関連記事・供給伸ばすシャンピニオン(前) 消臭機能、再び需要拡大期(2013.11.21)

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