新機能性表示制度の骨格固まる 報告書案の中身とは(2014.7.24)

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 消費者庁「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」報告書案では、当初から同庁が基本に据えていた「消費者の誤認を招かない自主的かつ合理的な商品選択に資する表示制度」の実現に向けて、「安全性の確保」「機能性表示を行うに当たって必要な科学的根拠の設定」「適正な表示による消費者への情報提供」の3点を軸に議論が進められた。報告書案ではさらに「国の関与の在り方」を加えた構成になっている。以下に主要項目の要点をまとめた。

【安全性確保】

 機能性を表示する食品は当該機能に関与する成分(機能性関与成分)が増強される場合が多く、過剰摂取による健康被害防止の観点から、機能性関与成分を中心とする食品の安全性確保を第一に考慮することが必要だとした。

 その機能性関与成分は「定性的かつ定量的に明らかにされていること」を条件とするが、注釈で機能性関与成分のすべての組成を明らかにする必要はなく、主要成分が測定可能であればよいとしている。

 安全性評価は「企業等が自ら食経験に関する情報の評価や、必要に応じて安全性試験に関する情報の評価を行うことが適当」とし、消費者庁がこれら評価方法についてガイドライン等の一定の考え方を示す。その際は錠剤・カプセル状等の加工食品、その他加工食品、生鮮食品など形状の違いを考慮する必要があるとした。

 食経験は①食習慣等を踏まえた機能性関与成分又は含有食品の日常的な摂取量②市販食品の販売期間③これまでの販売量④機能性関与成分の含有量⑤摂取集団(年齢、性別、健康状態、規模等)⑥摂取形状⑦摂取方法⑧摂取頻度―などの情報をもとに評価する。その際、国内では全国規模や機能性表示する食品の摂取集団より広範囲の摂取集団で、同等以上の摂取量かつ一定期間の食経験があること、外国の場合は日本人と食生活・栄養状態、衛生面、経済面等を勘案し、類似の国・地域で同様の食経験の評価を行うことが適当とした。

 一方、食経験情報では安全性が十分といえない場合は、特定保健用食品(トクホ)参考に安全性試験での評価が適当であるとした。具体的には①in vitro、in vivo試験による毒性試験②ヒト対象の摂取試験―を挙げた。成分評価の場合は、評価結果が当該成分を含む食品に適用できることの合理的な根拠があるか等の確認も必要としている。

 ほかに、医薬品との相互作用の有無、機能性関与成分を複数含む場合は当該成分同士の相互作用の有無の評価も求めた。

 安全性に関する容器包装への表示については機能性関与成分名、1日摂取目安量及び摂取方法、表示及び製品の安全性について国の評価を受けたものではない旨など6項目を挙げた。
 安全性情報の全てを容器包装で開示することは困難なため、容器包装以外の情報開示も必要とした。また、後述する販売前届出制導入に伴う消費者庁への届出事項は、原則、全て開示対象とすることが適当とした。

・生産・製造及び品質管理

 食品の生産や製造、品質管理については、食品衛生法に基づく基準等の遵守する。品質管理は制度として義務付けられている食品はないが、HACCP、ISO22000、FSSC22000、GMPなど、製品特性に応じ企業等が自主的かつ積極的に取り組むべきものとして位置付けることが適当で、特に「サプリメント形状の加工食品はGMPに基づく製品管理が強く望まれる」とした。

 また、品質管理の実効性担保として製品分析を行い、結果を広く開示することが適当であるとした。さらに、健康被害発生時の因果関係検証のため、検証に十分な量の製品を必ず確保することが適当であるともした。

・健康被害等の情報収集

 企業等は、消費者の安全を確保するため、健康被害等の情報収集体制を整備(消費者相談等の対応部署、相談体制の構築、相談の記録保存など)することが適当だとした。また、緊急時の対応体制の整備、容器包装に消費者対応部局の連絡先(電話番号等)、体調に異常を感じた際は速やかに摂取を中止し医師に相談すべき旨の表示も求めた。

 消費者庁や厚生労働省には、健康被害情報収集体制の整備や、厚生労働科学研究費による健康被害等の収集・解析手法の研究結果を踏まえ、必要に応じ現行の健康被害等の情報収集・解析手法の検討などを行うことが適当であるとした。

 さらに、現行の健康被害発生時の流通防止措置などについて、新制度もこれら措置を講じるとともに、罰則措置を講じることが適当だとした。

【表示の科学的根拠】

 機能性の科学的根拠水準は「最終製品を用いた臨床試験の実施、または最終製品若しくは機能性関与成分に関する研究レビューを企業等で行う」ことが適当とした。なお、主観的指標でのみ評価可能な機能性表示も新制度対象となり得るが、その指標は日本人で妥当性が得られ、かつ学術的に広くコンセンサスが得られたものとする。

 臨床試験方法は、原則、トクホの試験方法に準じ、さらに、有効性試験の研究計画の事前登録(UMIN臨床試験登録システム等)、国際指針(CONSORT声明等)に準拠した形式で査読付き論文により報告されることが適当だとした。ただ、事前登録や国際指針への準拠を必須要件とする場合は、適切な経過措置期間を設けることが適当だともした。

 一方、研究レビューは①レビューに係る成分と最終製品の成分の同等性の考察②いずれの食品形状もTotality of Evidenceの観点から肯定的と判断された機能であること③サプリメント形状の加工食品は、摂取量を踏まえた臨床試験で肯定的結果が得られていること④その他加工食品、生鮮食品は、摂取量を踏まえた臨床研究(介入試験又は観察研究)で肯定的結果が得られていること⑤複数の機能性関与成分についてそれぞれ機能性を表示しようとする場合は、安全性及び有効性について相互作用等の有無が確認されている前提のもと、成分ごとに機能性を実証――を満たしたものについて機能性表示を認めることが適当とした。

 科学的根拠レベルに関する具体的要件は①査読付きの学術論文等、広く入手可能な文献(1次研究。未公表論文も収集が望まれる)を用いたシステマティック・レビュー(SR)を必須とし、機能性表示をしようとする機能性関与成分の機能について、Totality of Evidenceの観点から肯定的といえるかどうか評価を行う②SRの結果、査読付き臨床研究論文が1本もない場合や、表示しようとする機能について、査読付きの臨床研究論文がこれを支持しない場合は機能性表示を認めない③SRの結果の客観性・透明性担保のため、検索条件や利益相反に関する情報、出版バイアスの検討結果など詳細に公表する④海外研究もレビュー対象になり得るが、日本人への外挿性を考慮⑤SRも出来るだけ事前登録を行い、新たな知見を含めた検討を定期的に実施、公表するよう努めること――を挙げた。 なお、SRの実施者は特に定めないが、責任は最終製品に係る企業等が負うのが適当としたほか、SRの質を担保する一環として、論文の質に関する要件設定も検討すべきとした。

【誤認のない表示】

 対象食品は食品全般としたが、アルコール含有飲料、ナトリウム・糖分等を過剰に摂取させる食品については健康への悪影響が否定できないため対象としない。

 対象成分は作用機序が考察されているもので、直接的又は間接的に定量可能な成分が適当であるとした。なお、食事摂取基準で摂取基準が策定されている栄養成分は、栄養政策との整合が図られない恐れがあり、今後さらに慎重な検討が必要とした。また、機能性関与成分が明確ではない成分の取扱いは制度の運用状況を踏まえ検討することが適当だとし、可能性を残した。

 対象者は生活習慣病等の疾病に罹患する前の人又は境界線上の人を対象とする。既に罹患している人、未成年者、妊産婦(妊娠計画中の者を含む)及び授乳婦に訴求するような製品開発、販売促進等は行わないことが適当であるとした。

 機能性表示の範囲は、前述の対象者における健康維持・増進に関する表現を適当とし、身体の特定の部位に言及した表現を行うことも可能とすることが適当だとした。ただ、疾病の治療効果、予防効果を暗示する表現、「肉体改造」等の健康の維持・増進の範囲を超えた表現は、薬事法の規制対象となることに留意すべきとしている。

 疾病の治療又は予防を目的とする表示、疾病リスク低減表示を始めとした疾病名を含む表示は、国の管理下(医薬品・トクホ)で慎重に取り扱われるべきとして対象としない。このほか、科学的根拠情報の範囲を超えた広告・宣伝は、景品表示法の不当表示、健康増進法の虚偽誇大広告に該当するおそれがあることに留意が必要とした。

 容器包装への表示は①国による評価を受けたものではない旨②疾病に既に罹患している人、未成年者、妊産婦(妊娠計画中の者を含む)及び授乳婦を対象としたものではない旨(生鮮食品は除く)③バランスの取れた食生活の普及啓発を図る文言――等を挙げた。①については新制度の対象とならない健康食品よりも信頼できないものと誤認されないような表現の検討を求めた。

 表示すべき事項の記載場所や文字の大きさについてガイドライン等を示す必要があるとした。

 なお、機能性に関する科学的根拠情報は、容器包装への表示以外の手段により詳細に情報開示を行うことが適当とした。

【国の関与】

 販売前届出制の導入が適当であるとした。要領としては①安全性や有効性等の根拠情報を含めた製品情報について、消費者庁に販売前の定められた期日までに届け出る②届け出情報は、原則、販売前に開示。ただし合理的な理由から公開されるべきでないものを除く③届け出情報は、販売前から国民が自由にアクセスできるようにする。

 表示事項や届け出事項等、新制度の表示に係る基準は食品表示法の食品表示基準に規定する。食品表示法に基づく収去等、販売後の監視を徹底することにより、新制度の適切な運用を図ることが適当であるとした。

 また、新制度の施行により、食品の機能性表示制度は、栄養機能食品制度、特定保健用食品制度及び新制度の3種類が併存する形となることから、消費者庁は関係機関と連携しつつ、消費者の理解増進に向けた取組について継続的に実施していくべきとした。企業等も、広告・宣伝の適正化や、消費者に分かりやすい表示づくりなどに積極的に取り組んでいくべきであるとした。

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