どう読む報告書案 JIHFS池田理事長に聞く(2014.7.24)


 消費者庁の「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」報告書案を識者はどう読んだのか。国内外の機能性表示制度に精通している日本健康食品規格協会(JIHFS)の池田秀子理事長に聞いた。


 報告書案の「消費者教育等」(22頁)を見ていただきたい。「今後、我が国の食品の機能性表示制度は、栄養機能食品制度、特定保健用食品制度及び新制度の3種類が併存する」とある。機能性を表示できる第3のカテゴリーが新たに誕生すると理解できる。これまで一般食品の中に紛れ込む形で存在していたいわゆる健康食品に法的カテゴリーが用意された点で、その意義は非常に大きい。

 錠剤・カプセル状などの健康食品について、「サプリメント形状の加工食品」とも明記された。従来と比べると一歩踏み込み、サプリメントという用語を容認するとともに、通常の食品とは一線を画すべき部分があるとの考え方が示された。これは、サプリメントの法制度化に向けた大きな前進だと捉えている。

 安全性確保に関して最低限の基準が明示されたことも大きい。食経験の考え方が明確に示されたこともそう。これまで曖昧であった部分がはっきり示されている。それらは、厚生労働省の「健康食品の安全性に関する自主点検ガイドライン」に準じる部分も含む。安全性の検討手続きを単に確認するだけといった、現在の認証スキームを見直し、ガイドラインを本当に意味あるものにしていく必要がある。報告書を実効性の伴うものにするには、原材料の安全性確保が一つの鍵になるからだ。

 第3のカテゴリーは既存カテゴリーとは全く違う。米国のダイエタリーサプリメント制度とも異なる点だが、品質と安全性について、国が関与せず、企業に全責任が委ねられた。だから、「国でやる以上に責任を持ってやって欲しい」…そうした要求が、報告書には示されたと受け止めている。作用メカニズムを絶対条件としているのは、その一つだ。

 非常に意味のある報告書だと思う。世界からも注目されるのではないか。米国制度を参考にしつつ、その課題を浮き彫りにし、それをどのようにカバーするかが検討された。その上で、機能性表示制度における安全性確保の方法と機能性を担保する手続きについて、極めてシャープな絵を描いてみせた。それにおいては世界最先端と言える。

 しかし、中小企業も含め、多くの企業が対応できるのかといえば、難しい。米国を始め、外国からも「厳しい」という意見が挙がるだろう。とりわけ、食経験情報が不十分な場合や、食経験よりも摂取量が多い場合などは、人を対象とした過剰摂取試験や長期摂取試験などで安全性の評価が求められている点。そこをどのようにクリアしていくかが極めて重要になる。

 決まった以上はこれで進まざるを得ない。新制度を「使えない制度」という人もいる。だが、これを好機として乗り出す企業は必ず現れる。研究開発体制を整えてきた超大手は、総力を結集して自社製品の差別化をめざすだろう。一方、文献レビュー型に関しては、原材料メーカーがどこまで情報を提供出来るかに掛かっている。安全性、品質、機能性のいずれも原材料の「同等性」が求められていることから、原材料事業者個々の取り組みがますます重要になるのは間違いない。

 (聞き手/構成=本紙記者・石川太郎)

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